アキシャルフラックスモータの電磁界シミュレーション

カテゴリ: 電磁界解析 | 2026-09-30 改稿
Axial flux motor electromagnetic simulation showing flux density distribution in airgap and stator core
アキシャルフラックスモータの磁束密度分布シミュレーション ― エアギャップ面における径方向・周方向の磁束密度コンター

理論:磁束の向きと、トルクを生む面

概要

🙋

電動バイクのインホイールモータで、薄い円板型のアキシャルフラックスモータが候補に挙がっています。普通のモータと何が違うんですか?

🎓

普通のモータ(ラジアル型)は、円筒のロータのまわりをステータが囲み、磁束が半径方向に流れる。アキシャル型はロータとステータが円板で、軸方向に向かい合い、磁束が軸と同じ向きに流れる。トルクは『すき間の面にかかる接線方向の力×半径』で決まるので、外側の大きな半径の部分がよく働く。薄くて外径が大きい場所なら、アキシャル型は面積も半径も稼げて有利になるんだ。

トルクの見積もり

$$ T_{axial} = \frac{2\pi}{3}\,\sigma\,R_o^3\,(1-k^3)\ \ \text{per gap}, \qquad k = \frac{R_i}{R_o} $$
$$ T_{radial} = 2\pi\,\sigma\,r^2 L $$

$\sigma$ はすき間の面にかかる平均のせん断応力(磁気的な接線方向の力÷面積)で、冷却方式によって数十kPa程度。アキシャル型は内径 $R_i$ から外径 $R_o$ の円環がトルクを生み、ラジアル型はロータ半径 $r$ と鉄心の長さ $L$ の円筒面が生む。アキシャル型のトルクは外径の3乗に比例する。

磁気吸引力

$$ F = \frac{B_g^2}{2\mu_0}\,A $$

$B_g$ はすき間の磁束密度、$A$ は向かい合う面積。磁石とステータの鉄心は強く引き合い、ラジアル型では周方向に打ち消し合うが、アキシャル型では軸方向の力としてそのまま現れる。ロータを2枚のステータで挟む、またはステータを2枚のロータで挟む構造にすると、両側の力が打ち消し合う。

Coffee Break よもやま話

最初のモータは円板型だった

1821年にファラデーが示した電磁回転や、1831年の円板発電機(ファラデー円板)は、実は磁界の中で円板が回る「アキシャル型」の配置だった。その後、鉄心を積み重ねて作りやすい円筒型のラジアル型が主流になり、アキシャル型はしばらく特殊な用途に限られていた。高性能な希土類磁石と、複雑な鉄心を作れる圧粉磁心や積層技術、そして3次元の電磁界解析がそろった2000年代以降、軽くて薄いモータが求められる電動車両や航空機で再び注目されている。

計算例

例1:外径200 mmでのトルク比較

以下は傾向を示すための仮想の例。すき間のせん断応力を25 kPaとし、アキシャル型はすき間2面(ステータ1枚をロータ2枚で挟む)、ラジアル型はステータ外径200 mmに対しロータ半径70 mmとした。

形式条件トルク
アキシャル(2面)内径比0.591.6 N·m
アキシャル(2面)内径比0.682.1 N·m
アキシャル(2面)内径比0.768.8 N·m
ラジアル鉄心長60 mm46.2 N·m
ラジアル鉄心長100 mm77.0 N·m
ラジアル鉄心長150 mm115.5 N·m
🙋

鉄心が長くできるなら、ラジアル型のほうがトルクが出るんですね。

🎓

そう。この例ではラジアル型の鉄心が約107 mmでアキシャル型の82 N·mに並ぶ。だからアキシャル型が効くのは、ホイールの中や航空機のプロペラの付け根のように、軸方向に短く外径が大きい場所だ。内径比を小さくすると面積が増えてトルクは上がるけど、内側では巻線を置く場所が狭くなり、電流を流せる量が減る。実際には巻線の入る量まで含めて最適な内径比を選ぶ(0.6前後がよく使われる目安)。

例2:軸方向の吸引力

すき間の磁束密度磁気圧力円環(外径200 mm・内径比0.6)の力
0.7 T195 kPa3.9 kN
0.9 T322 kPa6.5 kN
1.1 T481 kPa9.7 kN

片側のすき間だけで、自動車1台を持ち上げられるほどの力が軸方向に働く。両側で打ち消し合う構造でも、すき間が片側0.8 mm・反対側1.2 mmとずれると、磁石5 mm・残留磁束密度1.2 Tの簡単な見積もりで両側の力に約13%の差が出て、1 kN近い正味の力が残る。組立の精度、円板の剛性、軸受の容量は、電磁界解析と構造解析を合わせて決める。

解析の進め方

解析の手法

  • 3次元の電磁界解析:磁束は軸方向に流れ、半径によって磁極の幅や速度が変わる。2次元の断面では表せないので、基本は3次元で解く。
  • 準3次元の手法:半径方向に何枚かの円筒断面に切り、それぞれを2次元のラジアル型として解いて足し合わせる。設計の初期に速く比べるのに使う。
  • 構造・熱との連成:吸引力による円板のたわみはすき間を変え、トルクと力を変える。ステータの冷却は薄い構造ほど難しい。
Coffee Break よもやま話

「回したら円板が擦れた」

試作のアキシャルフラックスモータで、止まっている状態では問題なかったのに、組み立てて回したらロータがステータに擦れた、という話がある。原因は磁気吸引力による円板のたわみだった。外周に近いほど磁石の面積が大きく、力も大きくなるうえ、片持ちの円板は外周ほどたわみやすい。0.1 mmのたわみでも、1 mm前後のすき間には大きな割合で、すき間が狭まるとさらに吸引力が増す。電磁界で求めた力を構造解析に渡し、変形したすき間でもう一度電磁界を解く、という反復で確かめる必要がある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
2次元の断面だけで解析トルクや損失を誤る3次元または準3次元
軸方向の力を無視軸受の損傷・接触磁気圧力で力を確認
すき間のばらつきを考えない正味の力が残る公差を入れた解析
内径比を面積だけで決める巻線が入らない巻線の量も含め最適化
冷却を後回し薄いステータが過熱熱解析を同時に
🙋

モータのトルクや設計を自分でも試したいです。

🎓

モータ設計ツールでモータ設計、モータのトルク計算でトルク、モータドライブで駆動を試せるよ。関連する設計の話題はPMSMの設計、表面磁石型モータ、コギングトルク、モータの熱解析の記事にまとめてある。

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