ファン・送風機CFD

カテゴリ: 流体解析(CFD) | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for fan cfd theory - technical simulation diagram
ファン・送風機CFD — ファン法則と性能曲線の理論

理論と物理

概要

🧑‍🎓

ファンと送風機って何が違うんですか?


🎓

圧力比で区分される。概ね圧力比1.1以下(全圧上昇数百Pa程度)がファン、1.1~1.3程度が送風機だ。流れは基本的に非圧縮と見なせる場合が多いが、高速ファンでは翼端マッハ数が0.5を超えることもある。


ファン法則(相似則)

🧑‍🎓

ファン法則ってCFDでも使うんですか?


🎓

1D設計の段階で必須だ。幾何学的に相似なファンでは以下が成立する。


$$ Q \propto N D^3, \quad \Delta p \propto \rho N^2 D^2, \quad P \propto \rho N^3 D^5 $$

$N$:回転数、$D$:直径。CFDで1つの回転数のマップを作れば、相似則で他の回転数の性能を推定できる。ただしレイノルズ数効果による補正は必要だ。


全圧と静圧

🧑‍🎓

ファンの性能では全圧上昇と静圧上昇のどちらを見るべきですか?


🎓

ファンの使い方による。


$$ \Delta p_t = \Delta p_s + \frac{1}{2}\rho(V_2^2 - V_1^2) $$

  • ダクト系: 全圧上昇 $\Delta p_t$ で評価(上流・下流にダクトが接続)
  • 自由吹き出し: 静圧上昇 $\Delta p_s$ で評価(出口が開放)
  • 自由吸い込み: ファン静圧で評価

🧑‍🎓

CFDの境界条件もそれに合わせて変えるんですか?


🎓

そう。ダクト系ならシステムの圧力損失を出口境界条件で模擬する。自由吹き出しなら出口を大気開放(静圧0Pa gauge)にする。実際のシステム抵抗曲線とファン特性の交点が運転点になる。


騒音予測の基礎

🧑‍🎓

ファンの騒音もCFDで予測できるんですか?


🎓

できる。ファン騒音は離散周波数成分(BPF: Blade Passing Frequency)と広帯域成分に分かれる。


$$ f_{BPF} = N_{blade} \times \frac{RPM}{60} $$

離散成分はURANSで、広帯域成分はLES/DES+FW-Hで予測する。Fluent、STAR-CCM+ともにFW-Hソルバーを内蔵している。

Coffee Break よもやま話

ファン理論の歴史——ランキン-フルード運動量理論からプランドル翼理論まで

ファンの空力理論はプロペラ理論と同じ歴史を持ち、Rankine-Froude(1865〜1878年)の運動量理論から始まる。ファンを仮想の無限薄アクチュエーターディスクとして流体に運動量を与える単純モデルだ。その後、Prandtl(1921)の翼理論(揚力と誘導抗力の関係)と渦輪を組み合わせた「渦格子法(Vortex Lattice Method)」が開発され、個々のブレードの空力特性を計算できるようになった。現代のBEM(Blade Element-Momentum)法はこれを一次元化した設計ツールで、CFDの結果と実測を組み合わせて翼素の揚力・抗力係数を校正することで信頼性の高い性能予測が実現する。ファンのCFDはこの古典理論の「点検係官」として機能しており、BEM予測から外れるCFD結果は形状の詳細効果か乱流の影響を示すサインとして読み取られる。

各項の物理的意味
  • 時間項 $\partial(\rho\phi)/\partial t$:蛇口をひねった瞬間を思い浮かべてください。最初は水がバタバタと不安定に出て、しばらくすると安定した流れになりますよね? この「変化している最中」を記述するのが時間項です。心臓の拍動で血流が脈打つのも、エンジンのバルブが開閉するたびに流れが変動するのも、すべて非定常現象。では定常解析とは? 「十分時間が経って流れが落ち着いた後」だけを見る——つまりこの項をゼロにする。計算コストが大幅に下がるため、まず定常で解いてみるのがCFDの基本戦略です。
  • 対流項 $\nabla \cdot (\rho \mathbf{u} \phi)$:川に落ち葉を落としたらどうなりますか? 流れに乗って下流に運ばれますよね。これが「対流」——流体の動きが物を運ぶ効果です。暖房の温風が部屋の端まで届くのも、空気という「運び屋」が熱を対流で輸送しているから。ここが面白いところ——この項は「速度×速度」を含むため非線形です。つまり、流れが速くなるとこの項が急激に強くなり、制御が難しくなる。これが乱流の根本原因です。よくある勘違い:「対流と伝導は同じようなもの」→ 全然違います! 対流は流れが運ぶ、伝導は分子が伝える。桁違いの効率差があります。
  • 拡散項 $\nabla \cdot (\Gamma \nabla \phi)$:コーヒーにミルクを入れて放置したことはありますか? かき混ぜなくても、しばらく経つと自然に混ざりますよね。あれが分子拡散です。では次の質問——ハチミツとお水、どちらが流しやすいですか? 当然お水ですよね。ハチミツは粘性($\mu$)が高いから流れにくい。粘性が大きいと拡散項が強くなり、流体は「もったりした」動きになります。レイノルズ数が小さい流れ(ゆっくり、ドロドロ)では拡散が支配的。逆にRe数が大きい流れでは対流が圧倒し、拡散は脇役になります。
  • 圧力項 $-\nabla p$:注射器のピストンを押すと、液体が針先から勢いよく出ますよね? なぜでしょう? ピストン側が高圧、針先が低圧——この圧力差が流体を押す力になるからです。ダムの放水も同じ原理。天気図で等圧線がギュッと密になっている場所では? そう、強風が吹きます。「圧力差があるところに流れが生まれる」——これがナビエ-ストークス方程式の圧力項の物理的意味。ここでの勘違いポイント:CFDの「圧力」は絶対圧ではなくゲージ圧のことが多い。圧縮性解析に切り替えたとたんに結果がおかしくなる場合、絶対圧/ゲージ圧の混同が原因かもしれません。
  • ソース項 $S_\phi$:暖められた空気が上に昇る——なぜでしょう? 周囲より軽く(密度が低く)なったから、浮力で押し上げられるのです。この浮力はソース項として方程式に追加されます。他にも、ガスコンロの炎で化学反応熱が発生する、工場の電磁ポンプで金属溶湯にローレンツ力がかかる…これらはすべて「外部から流体にエネルギーや力を注入する」作用であり、ソース項で表現します。ソース項を忘れるとどうなるか? 自然対流の解析で浮力を入れ忘れると、流体は一切動かない——冬の部屋で暖房をつけたのに暖かい空気が上に行かない、という物理的にありえない結果になります。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:クヌッセン数 Kn < 0.01(分子平均自由行程 ≪ 代表長さ)で成立
  • ニュートン流体仮定:せん断応力と歪み速度が線形関係(非ニュートン流体では粘度モデルが必要)
  • 非圧縮性仮定(Ma < 0.3の場合):密度を一定として扱う。マッハ数0.3以上では圧縮性効果を考慮
  • ブシネスク近似(自然対流):密度変化を浮力項のみで考慮し、他の項では一定密度を使用
  • 適用外ケース:希薄気体(Kn > 0.1)、超音速・極超音速流れ(衝撃波捕捉が必要)、自由表面流れ(VOF/Level Set等が必要)
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
速度 $u$m/s入口条件で体積流量から換算する際、断面積の単位に注意
圧力 $p$Paゲージ圧と絶対圧の区別。圧縮性解析では絶対圧を使用
密度 $\rho$kg/m³空気: 約1.225 kg/m³@20°C、水: 約998 kg/m³@20°C
粘性係数 $\mu$Pa·s動粘性係数 $\nu = \mu/\rho$ [m²/s] との混同に注意
レイノルズ数 $Re$無次元$Re = \rho u L / \mu$。層流/乱流遷移の判定指標
CFL数無次元$CFL = u \Delta t / \Delta x$。時間刻みの安定性に直結

数値解法と実装

MRF法(定常)

🧑‍🎓

ファンのCFDはMRFで十分ですか?


🎓

性能曲線(P-Q特性)の予測にはMRFで十分だ。回転域と静止域をGGI面で接続し、回転域にコリオリ力・遠心力を付加する。計算コストは静止場の計算とほぼ同じだ。


🧑‍🎓

MRFの弱点は何ですか?


🎓

翼-下流構造物間の非定常干渉を捉えられない。例えばモータのストラットや出口案内翼との干渉による圧力脈動はMRFでは計算できない。


Sliding Mesh(非定常)

🧑‍🎓

どういう場合にSliding Meshが必要になりますか?


🎓

以下のケースだ。


解析目的推奨手法
P-Q特性曲線MRF(定常)
BPF圧力脈動Sliding Mesh(URANS
広帯域騒音予測Sliding Mesh(DES/LES)+FW-H
ストラット干渉による振動Sliding Mesh(URANS
🧑‍🎓

Sliding Meshの時間刻みはどう決めますか?


🎓

翼1枚通過の間に20~50タイムステップが目安だ。翼枚数7枚、3000rpmなら翼通過周期は 60/(3000×7) = 2.86ms。これを30分割すると $\Delta t \approx 95 \mu s$ だ。


非圧縮と弱圧縮

🧑‍🎓

ファンの場合、圧縮性は無視していいですか?


🎓

翼端マッハ数が0.3以下なら非圧縮で十分だ。OpenFOAMのsimpleFoam(定常)やpimpleFoam(非定常)で計算できる。マッハ数0.3~0.6なら弱圧縮性を考慮したほうがよく、CFXの圧縮性ソルバーを使うか、Fluentの圧力ベースConnected Coupled Solverで対応する。


ファン特有のメッシュ Tips

🧑‍🎓

ファンのメッシュで気をつける点は?


🎓

軸流ファンは翼弦が長くアスペクト比(翼幅/翼弦)が小さいことが多い。チップ隙間の相対サイズも大きいから、チップ漏れ流れの影響が大きい。翼端スパン方向に十分なメッシュ密度を確保すること。また、ファンは流入速度が低いためy+が小さくなりやすく、壁面第一層が薄くなりすぎないよう注意だ。

Coffee Break よもやま話

ファンCFDのP-Q曲線生成——RANS多点計算と収束失速点の扱い

ファンの性能曲線(P-Q曲線: 圧力-流量特性)をCFDで生成するには、複数の流量条件(通常5〜10点)でそれぞれ解析を実施する必要がある。設計流量付近(最高効率点BEP)は収束しやすいが、低流量側(部分流量域)では失速セル(Rotating Stall)が発生し定常解が存在しなくなる。この「失速点以降」をCFDで追いかけるには非定常(URANS)解析が必要で、定常RANSは発散するか非物理的な解に収束する。実務的なP-Q曲線生成では、設計点を中心に低流量・高流量方向に2〜3点ずつ解析し、失速点より低流量域は実験か1D理論予測で補完する方法が多い。また各流量条件でRelaxation Factorを個別チューニングすることが収束性改善の実践的テクニックだ。

風上差分(Upwind)

1次風上: 数値拡散が大きいが安定。2次風上: 精度向上するが振動のリスク。高レイノルズ数流れでは必須。

中心差分(Central Differencing)

2次精度だが、Pe数 > 2で数値振動が発生。低レイノルズ数の拡散支配流れに適する。

TVDスキーム(MUSCL、QUICK等)

リミッタ関数により数値振動を抑制しつつ高精度を維持。衝撃波や急勾配の捕捉に有効。

有限体積法 vs 有限要素法

FVM: 保存則を自然に満足。CFDの主流。FEM: 複雑形状・マルチフィジックスに有利。SPH等のメッシュフリー法も発展中。

CFL条件(クーラン数)

陽解法: CFL ≤ 1が安定条件。陰解法: CFL > 1でも安定だが、精度と反復回数に影響。LES: CFL ≈ 1を推奨。物理的意味: 1タイムステップで情報が1セル以上進まないこと。

残差モニタリング

連続の式・運動量・エネルギーの各残差が3〜4桁低下で収束と判断。質量保存の残差は特に重要。

緩和係数

圧力: 0.2〜0.3、速度: 0.5〜0.7が一般的な初期値。発散する場合は緩和係数を下げる。収束後は上げて加速。

非定常計算の内部反復

各タイムステップ内で定常解に収束するまで反復。内部反復数: 5〜20回が目安。残差がタイムステップ間で変動する場合は時間刻みを見直す。

SIMPLE法のたとえ

SIMPLE法は「交互に調整する」手法。まず速度を仮に求め(予測ステップ)、その速度で質量保存が満たされるよう圧力を補正し(補正ステップ)、補正された圧力で速度を修正する——このキャッチボールを繰り返して正解に近づく。2人で棚を水平にする作業に似ている:片方が高さを合わせ、もう片方がバランスを取り、これを交互に繰り返す。

風上差分のたとえ

風上差分は「川の流れに立って上流の情報を重視する」手法。川の中にいる人が下流を見ても水の出所は分からない——上流の情報が下流を決めるという物理を反映した離散化手法。精度は1次だが、流れの方向を正しく捕捉するため安定性が高い。

実践ガイド

P-Q特性の計算手順

🧑‍🎓

ファンの性能曲線をCFDで取得する手順を教えてください。


🎓

1. 基準計算: 設計点流量で定常MRF計算を収束させる

2. 流量変化: 出口を質量流量指定(or 静圧指定)で5~8点の運転点を計算

3. 各運転点で記録: 全圧上昇、静圧上昇、軸動力、効率

4. 効率計算: $\eta = \frac{Q \cdot \Delta p_t}{\tau \cdot \omega}$($\tau$:トルク、$\omega$:角速度)


🧑‍🎓

出口を質量流量指定と静圧指定のどちらがいいですか?


🎓

自由吹き出しファンなら出口静圧0Pa(大気開放)にして流量を結果として得る方法が物理的に正しい。ダクト系なら質量流量指定で各流量点の全圧上昇を求めるのが安定する。


実験との比較検証

🧑‍🎓

実験との合わせ方のコツはありますか?


🎓

AMCA 210規格やJIS B 8330に基づく試験結果と比較する場合、以下に注意する。


項目CFDの注意点
全圧測定位置実験はダクト内特定断面。CFDも同じ位置で評価
入口条件ベルマウス吸い込みかダクト吸い込みかで大きく異なる
モータストラット実験では存在するがCFDで省略されがち
翼端隙間実機の組立公差で変動。CFDは公称値で計算
🧑‍🎓

ストラットの影響って大きいんですか?


🎓

風量5~15%の低下が報告されている。ストラットの後流がファン吸い込みの速度分布を歪めるからだ。精度を求めるならストラットもモデルに含めるべきだ。


軸流ファンの失速

🧑‍🎓

低流量で失速が起きると何が問題ですか?


🎓

軸流ファンは失速するとP-Q曲線に「ディップ」(へこみ)が生じ、系統の不安定を引き起こす。CFDではMRFの定常計算で低流量側の収束が悪化する点が概ねの失速限界だ。ただし正確な失速マージン評価には非定常の全周計算が必要になる。

Coffee Break よもやま話

データセンター冷却ファンの性能最適化——CFDで騒音と風量を両立

データセンターのサーバーラックに搭載される冷却ファン(軸流型、直径80〜120mm)の設計では、風量確保と騒音低減の両立が永遠の課題だ。CFD(RANS+MRF法)でファン特性曲線(P-Q曲線)を計算し、静圧Δpと風量Qの関係からシステム動作点を特定する。騒音予測にはFW-H(Ffowcs Williams-Hawkings)方程式を連成させた空力騒音計算が使われ、ブレード通過周波数(BPF=N×Z、N:回転数、Z:翼枚数)の基音・高調波成分を事前評価できる。あるサーバーメーカーの設計では、ブレードの傾斜角を5°変更するCFD最適化で同一風量を維持しながら騒音を3dB(A)低減し、騒音規制(ISO7779)の余裕を確保した成功事例が報告されている。

解析フローのたとえ

CFDの解析フローは「水族館の水槽を設計する」感覚で考えてみてください。まず水槽の形を決め(計算領域)、水の入り口と出口を設計し(境界条件)、ポンプの強さを設定する(流量条件)。魚がどう泳ぐか見たければ粒子追跡。水温が気になれば熱解析を追加。…どうですか? 意外と直感的ではありませんか?

初心者が陥りやすい落とし穴

「y+って何ですか?」——この質問が出たら要注意。壁面近くのメッシュ解像度を表すy+は、CFDの結果精度を左右する最重要パラメータの1つ。壁関数を使うなら30〜300、壁を完全に解像するなら1以下。これを確認せずに「摩擦抵抗が合わない!」と悩む人がとても多い。体温計の先端をちゃんと脇に挟まないで「熱がないのに37.5度って出た!」と慌てているようなものです。

境界条件の考え方

入口の境界条件は「蛇口をどのくらい開けるか」と同じ。ちょろちょろ出すか(低速)、全開にするか(高速)。でもCFDではもう一つ——「どのくらい暴れた水を出すか」(乱流強度)も指定する必要があります。蛇口の開け方を間違えると、下流のシンク全体の流れが変わりますよね? CFDでも入口条件のミスは下流全体に波及します。

ソフトウェア比較

FW-H音響アナロジー

🧑‍🎓

ファン騒音予測に使われるFW-H方程式って何ですか?


🎓

Ffowcs Williams-Hawkings方程式は、近傍場のCFD結果から遠方場の音圧を推定する音響アナロジーだ。


$$ 4\pi p'(\mathbf{x},t) = \frac{\partial}{\partial t}\int_S \frac{Q_n}{r|1-M_r|} dS - \frac{\partial}{\partial x_i}\int_S \frac{L_i}{r|1-M_r|} dS $$

第1項がモノポール(厚み騒音)、第2項がダイポール(荷重騒音)だ。ファンではダイポール項が支配的。


🧑‍🎓

Fluent や STAR-CCM+ ではどう使うんですか?


🎓

Sliding Meshの非定常計算で翼面の圧力時刻歴を取得し、FW-Hソルバーに渡す。受音点(マイク位置)を指定すると、そこでの音圧時刻歴とスペクトルが得られる。


ソルバーFW-H実装備考
Fluent内蔵FW-H(Farfield)透過面も指定可能
STAR-CCM+FW-H Integral SurfaceBroadband Noise Modelも利用可
CFX直接搭載なしCFD-Post経由でデータ抽出しMatlab等で後処理
OpenFOAMlibAcousticsライブラリコミュニティ開発
🧑‍🎓

CFXにはFW-Hがないんですか?


🎓

直接は搭載されていない。翼面の圧力時刻歴をCFD-Postでエクスポートして外部ツールで処理するか、Fluentに非定常結果を引き継いでFW-Hを適用する方法がある。


広帯域騒音モデル

🧑‍🎓

DESをやらなくても騒音の概算はできますか?


🎓

定常RANSベースの広帯域騒音モデル(Broadband Noise Source Model)がFluentとSTAR-CCM+にある。乱流統計量から音源強度を推定するもので、定性的な音源分布の把握には使える。ただし絶対値の精度はDES+FW-Hに劣る。


騒音低減設計

🧑‍🎓

CFDで騒音低減策を評価した事例はありますか?


🎓

いくつか代表的なアプローチがある。


低減策効果CFDでの評価
翼枚数の最適化BPF周波数の制御MRFでも評価可能
スイープ翼(前傾・後傾)翼端騒音低減3~6dBSliding Mesh + FW-H
翼後縁のセレーション後流騒音低減2~5dBDES + FW-H
翼端フェンス/ウィングレットチップ騒音低減MRF or Sliding Mesh
Coffee Break よもやま話

ファンCFDツール比較——ANSYS TurboSystemとSimericsの特化機能

ファン・送風機の専用CFD解析ツールとして、ANSYS TurboSystem(BladeModeler + TurboGrid + CFXの統合環境)は翼形状設計から3D-CFDまでワンストップで対応でき、航空エンジン〜産業用ファンまで広く使われる。特にTurboGridの構造格子自動生成はファン翼の複雑なブレードパッセージメッシュを30分程度で生成する効率性が強みだ。Simerics(旧PumpLinx)はポンプ・コンプレッサ・ファンに特化したカルテシアンメッシュ自動生成で、形状変更時の再メッシュが1分以内という高速性が売りだ。OpenFOAMはsimpleFoam + AMI(Arbitrary Mesh Interface)でファン解析が可能だが、工業的な精度検証データの蓄積が商用ツールより少なく、産業応用ではサポート付き商用ツールの採用が多い。

選定で最も重要な3つの問い

  • 「何を解くか」:ファン・送風機CFDに必要な物理モデル・要素タイプが対応しているか。例えば、流体ではLES対応の有無、構造では接触・大変形の対応能力が差になる。
  • 「誰が使うか」:初心者チームならGUIが充実したツール、経験者ならスクリプト駆動の柔軟なツールが適する。自動車のAT車(GUI)とMT車(スクリプト)の違いに似ている。
  • 「どこまで拡張するか」:将来の解析規模拡大(HPC対応)、他部門への展開、他ツールとの連携を見据えた選択が長期的なコスト削減につながる。

先端技術

車両冷却ファンのCFD

🧑‍🎓

自動車のラジエータ冷却ファンもCFDで解析するんですか?


🎓

する。ただしファン単体ではなく、シュラウド・ラジエータ・コンデンサ・エンジンルーム全体を含むシステムCFDが主流だ。ファンをMRFで回転域に設定し、ラジエータは多孔質媒体モデルで圧力損失を模擬する。


🧑‍🎓

ラジエータを多孔質で扱うんですか?


🎓

個々のフィンをメッシュ化するのは非現実的だから、圧力損失係数と熱交換特性をマクロモデルとして入力する。Fluentの Heat Exchanger Model や STAR-CCM+ の Dual Cell Heat Exchanger が典型的だ。


$$ \Delta p = -\left( \frac{\mu}{\alpha} v + C_2 \frac{\rho}{2} v^2 \right) \Delta n $$

$\alpha$:透過率、$C_2$:慣性抵抗係数。これらはラジエータの風洞試験データから同定する。


システムインピーダンスとファンのマッチング

🧑‍🎓

システム全体の抵抗とファンの釣り合いはどう確認しますか?


🎓

CFDでシステム側の抵抗曲線(圧力損失 vs 流量)とファン側のP-Q曲線の交点を求める。理想的にはファンのP-Q曲線の右下がり部分(安定運転域)に交点があること。


🧑‍🎓

CFDだとファンの回転数を変えてパラメトリックに計算することになりますか?


🎓

そうだ。設計段階ではファン法則で回転数スケーリングし、最終確認でCFDという順序が効率的だ。


エアコン用シロッコファン

🧑‍🎓

遠心ファン(シロッコファン)のCFDは軸流と何が違いますか?


🎓

シロッコファンは翼枚数が30~60枚と非常に多く、1ピッチの周期計算で済ませたくても翼枚数とスクロール(ボリュート)の干渉があるから全周計算が必要だ。


🧑‍🎓

翼1枚ずつメッシュを切るのは大変ですね。


🎓

TurboGridは向かない。Fluent MeshingやSTAR-CCM+の自動メッシュで全周を一気に生成するほうが効率的だ。ポリヘドラル+プリズムの組み合わせで200~500万セルが目安だ。


電子機器冷却ファン

🧑‍🎓

PCのケースファンのような小型ファンもCFDで扱いますか?


🎓

扱う。30~120mm径のDCファンは翼弦Reが$10^4$~$10^5$と低く、層流域が広い。遷移モデル(Gamma-Theta)を使うか、翼面の遷移位置を手動で指定する必要がある。FluentのTransition SST モデルが適している。

Coffee Break よもやま話

ファン空力騒音の最前線——Amiet理論とLES+CAAの連成解析

ファン騒音の予測は「翼型乱流相互作用騒音(Airfoil-Turbulence Interaction Noise)」と「後縁騒音(Trailing Edge Noise)」の2種類が主要源だ。Amiet(1975)が提案した散乱理論は、入射乱流スペクトルと翼型の音響応答関数を畳み込んで遠方場音圧スペクトルを解析的に計算する手法で、風力タービン・HVAC・自動車シロッコファンの騒音予測の標準的な出発点となっている。一方LES(大渦シミュレーション)でブレード周辺の非定常乱流を直接計算し、FW-H方程式(Ffowcs Williams-Hawkings)で音場を計算するCFD-CAAが産業応用でも普及しつつある。Delft大学のベンチマーク翼型(NACA0012)後縁騒音実験ではLES+FW-Hの予測精度が±3dBに達しており、実用的な精度が確認されている。

トラブルシューティング

出口境界での逆流

🧑‍🎓

ファンのCFDで出口境界に逆流警告が出るんですが…


🎓

ファンの出口は旋回成分が残っているから、特にハブ付近やシュラウド付近で局所的に逆流が発生しやすい。対処法は以下だ。


1. 出口境界を下流に延長: ファン出口から直径の2~3倍下流に出口面を置く

2. Opening BCに変更: CFXのOpening境界は流入・流出の両方を許容する

3. 出口ダクトの追加: 現実の据付条件に合わせたダクトをモデルに含める


🧑‍🎓

Openingにすると何か問題はありますか?


🎓

全圧が指定値で固定されるから、ファン自体の全圧上昇の評価はファン出口直後の内部面で行う必要がある。出口面の値は使わないこと。


MRF界面の不連続

🧑‍🎓

MRFの計算結果で、回転域と静止域の界面に速度の不連続が見えます。これは問題ですか?


🎓

MRFは「フローズンロータ」に相当するから、翼の位置が固定された状態での近似解だ。界面での速度不連続は避けられない。全体性能には影響が小さいが、ウェイクの詳細構造を見たいならSliding Meshに切り替える必要がある。


モータ部の扱い

🧑‍🎓

ファンの中心にあるモータ部分はどうモデル化しますか?


🎓

DCファンのモータは通常、翼のハブ部に位置する。CFDモデルでは以下の2通りがある。


  • ソリッド壁として扱う: 最も単純。モータ外形を回転壁として設定
  • 熱源として扱う: モータ発熱の影響を評価する場合、内部に体積熱源を設定

🧑‍🎓

モータの支持ストラットは入れるべきですか?


🎓

ストラットによるファン吸い込み側の流れの歪みは性能に5~15%影響する場合がある。性能評価目的なら含めるべきだ。騒音予測では必須で、ストラット-翼干渉がBPFの高調波成分を生む。


メッシュ品質チェックリスト

🧑‍🎓

ファンCFDのメッシュで最終確認すべき項目は?


🎓
チェック項目基準値確認方法
翼面y+1~5(SST Low-Re)CFD-Post壁面プロット
MRF界面メッシュサイズ比1:1~1:2界面両側のセルサイズ確認
チップ隙間の径方向セル数10以上断面メッシュ確認
翼前後縁の周方向セル数前縁に20以上O-grid設定確認
出口境界の逆流率5%以下ソルバーログ確認
Coffee Break よもやま話

ファンCFD特性曲線の実測との乖離——入口乱流と据え付け効果の見落とし

ファンCFDで全圧が実測より10〜15%高くなる過大評価は、入口条件の設定ミスが原因の代表例だ。実際のファンは吸い込み口に障害物(グリル、フィルタ)があり、入口速度分布が一様ではない。CFDで一様入口条件(uniform velocity)を仮定すると、実際より良好な入口条件になるため全圧が高く出る。また「据え付け効果(Installation Effect)」——ファンを筐体内に実装した際の入口・出口干渉が性能に10〜20%の影響を与えることが知られているが、単体ファンで解析すると据え付け損失が無視される。対策はISO 5801規格(ファン試験方法)の試験条件をCFDモデルに忠実に再現してから、実際の据え付け条件に切り替えるという2段階解析だ。

「解析が合わない」と思ったら

  1. まず深呼吸——焦って設定をランダムに変えると、問題がさらに複雑になる
  2. 最小再現ケースを作る——ファン・送風機CFDの問題を最も単純な形で再現する。「引き算のデバッグ」が最も効率的
  3. 1つだけ変えて再実行——複数の変更を同時に行うと、何が効いたか分からなくなる。科学実験と同じ「対照実験」の原則
  4. 物理に立ち返る——計算結果が「重力に逆らって物が浮く」ような非物理的な結果なら、入力データの根本的な間違いを疑う
関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

熱解析V&V・品質保証構造解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0
Written by NovaSolver Contributors
Anonymous Engineers & AI — サイトマップ
プロフィールを見る