バッテリー熱管理
理論:電池の発熱と冷え方
概要
電池パックの熱設計では、何がいちばん大事なんですか?
リチウムイオン電池は、温度が高いと劣化が早まり、さらに高温では発火の危険もある。だから温度を一定の範囲に保つことが最優先だ。発熱は電流の2乗に比例するので、急速充電や高出力で急に増える。しかもセルの中は熱が伝わりにくく、表面を冷やしても中心は熱いことがある。21700形のセルを例に、放電レートと冷却方法による温度の違いを計算しよう。
発熱
第1項は内部抵抗のジュール熱、第2項は反応に伴う可逆な熱(エントロピー熱)。ここではジュール熱だけを考えた。1回の放電で出る熱は電流の2乗×時間なので、放電時間が1/Cになっても、断熱温度上昇はCレートに比例して大きくなる。
温度の時間変化とセル内部の温度差
セル全体を1つの温度とみなした集中定数の式と、半径方向の熱伝導による中心と表面の差(定常)。ビオ数 hr/(2k) が0.1を超えると、内部の温度差を無視できない。
ベルナルディの式
電池の発熱を、ジュール熱と可逆な熱の和で表す式は、1985年にアメリカのベルナルディらがまとめたもので、今も電池の熱解析の基本になっている。電気自動車が広まった2010年代以降、セルの温度を15〜35℃ほどに保つための液冷システムや、セル間の延焼を防ぐ設計が重視されるようになった。熱設計は、性能と寿命だけでなく安全にも直結している。
計算例:21700形セル
直径21 mm・長さ70 mm、質量70 g、比熱1000 J/kgK、容量5 Ah、内部抵抗20 mΩ、半径方向の熱伝導率0.5 W/mK(仮定)。周囲25℃から放電を始める。
| 放電レート | 電流 | 発熱 | 断熱温度上昇 | 自然空冷 10 | 強制空冷 50 | 液冷相当 300 | 中心と表面の差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.5C | 2.5 A | 0.12 W | 12.9 K | 27.3 °C | 25.5 °C | 25.1 °C | 0.3 K |
| 1C | 5 A | 0.50 W | 25.7 K | 33.8 °C | 26.9 °C | 25.3 °C | 1.1 K |
| 2C | 10 A | 2.00 W | 51.4 K | 53.0 °C | 32.5 °C | 26.3 °C | 4.6 K |
| 3C | 15 A | 4.50 W | 77.1 K | 75.6 °C | 41.8 °C | 27.8 °C | 10.2 K |
冷却の列は熱伝達率(W/m²K)ごとの放電終了時の温度(集中定数)。中心と表面の差は放電中の定常値の目安。ビオ数は10で0.11、50で0.53、300で3.2。
液冷なら3C放電でも表面は28℃なのに、中心は10 Kも高いんですね。
巻いた電極と薄い樹脂の膜が何十層も重なっているので、半径方向には熱が伝わりにくい。熱伝達率を上げて表面を冷やしても、中心からの熱の出口はこの低い熱伝導率で決まる。だから液冷では、セルの表面温度より中心の温度、そしてパック内のセル間の温度のばらつきが設計の焦点になる。もう一つ大事なのは劣化や低温で内部抵抗が増えることで、内部抵抗が2倍の40 mΩになると、2C放電の断熱温度上昇は103 Kにもなる。新品のセルで余裕があっても、使い続けたセルでは足りなくなることがある。
熱設計のポイント
- 最も厳しい使い方(急速充電・高出力・高温環境)で発熱を見積もる。
- 劣化と低温による内部抵抗の増加を見込む。
- セルの異方性(半径方向と軸方向の熱伝導率の違い)を入れる。
- パック全体でセル間の温度差を5 K程度以内にする目標を置くことが多い。
- 1セルの異常発熱が隣へ広がらないかも評価する。
「冬の急速充電で止まった」
ある電気自動車で、冬の朝に急速充電すると、充電の途中で電流が大きく絞られる現象が起きた。低温では内部抵抗が大きくなるうえ、リチウムの析出を防ぐために充電電流を制限する必要がある。対策として、充電前に電池を温める制御が加えられた。電池の熱管理は冷やすだけでなく、温めることも含む。最適な温度範囲に保つことが、性能・寿命・安全のすべてにつながる。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 新品の内部抵抗で設計 | 劣化後に過熱 | 劣化後の値で確認 |
| 表面温度だけで判断 | 中心の過熱を見逃す | 内部温度を評価 |
| 熱伝導率を等方性に | 内部の温度差を誤る | 異方性を入れる |
| 可逆熱を常に無視 | 低レートで誤差 | 必要に応じて含める |
| セル間のばらつきを無視 | 一部のセルが早く劣化 | パック全体で解析 |
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EV電池の冷却板ツール、電池モデルツール、電池のカレンダー劣化ツールで試せるよ。関連するページは内部発熱を伴う非定常伝導、集中定数法が参考になる。
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