内部発熱を伴う非定常伝導
理論:発熱と放熱がつり合うまで
概要
内部で発熱する部品は、最終的な温度だけ分かれば十分ですか?
それだけでは足りないことが多い。最終的な温度(定常)に達するまでに時間がかかり、その間に負荷が止まるなら、定常の温度には届かない。逆にコンクリートのように発熱が時間とともに弱まる場合は、途中で最高温度をとる。さらに、表面の冷え方(ビオ数)で、定常の温度も時間も大きく変わる。平板を例に、定常に近づく速さと、水和熱で温まる厚いコンクリートの最高温度を計算してみよう。
支配方程式と定常解
$L$ は半厚さ、$h$ は表面の熱伝達率。表面温度を一定に保つのは $Bi \to \infty$ に当たる。ビオ数が小さいほど、表面での温度上昇が加わって中心の定常温度は高くなる。
表面温度一定のときの級数解
ダムのコンクリートを冷やす
1930年代、アメリカのフーバーダムの建設では、大量のコンクリートの水和熱が大きな問題になった。そのまま固めると、内部が冷えきるまで100年以上かかり、その間の収縮でひび割れると見積もられた。そこでコンクリートの中に冷却用の鋼管を埋め込み、冷水を流して熱を抜きながら、ブロックに分けて打設した。発熱と熱伝導の計算が、巨大構造物の工法を決めた例だ。今もマスコンクリートでは、同じ考え方で温度ひび割れを防いでいる。
計算例
例1:定常に近づく速さ(表面温度一定)
| 定常に対する割合 | フーリエ数 | 半厚さ0.2 m・α 7×10⁻⁷ m²/s |
|---|---|---|
| 50% | 0.294 | 4.7 時間 |
| 90% | 0.946 | 15.0 時間 |
| 99% | 1.879 | 29.8 時間 |
差分法(200分割)で解くと90%に達したのはFo = 0.947で、級数解と一致した。
例2:表面の冷え方の影響
| ビオ数 | 定常の中心温度上昇(表面温度一定の何倍) | 90%に達するフーリエ数 |
|---|---|---|
| ∞(表面温度一定) | 1.0 | 0.95 |
| 10 | 1.2 | 1.14 |
| 1 | 3.0 | 3.12 |
| 0.1 | 21 | 23.8 |
例3:マスコンクリートの水和熱
断熱状態での温度上昇40 K、発熱は時定数1日で指数関数的に減る。熱拡散率1.0×10⁻⁶ m²/s、両面は打設時の温度に保たれるとした。
| 厚さ | 中心の最高温度上昇 | 最高になる時刻 |
|---|---|---|
| 0.5 m | 8.6 K | 0.5 日 |
| 1 m | 19.4 K | 1.1 日 |
| 2 m | 31.6 K | 2.2 日 |
| 4 m | 38.5 K | 4.1 日 |
厚さ4 mだと、断熱状態の40 Kとほとんど変わらないんですね。
熱が表面へ逃げるのにかかる時間は、半厚さの2乗を熱拡散率で割った値が目安で、厚さ4 mでは約46日になる。発熱は数日で終わるので、その間ほとんど熱は逃げず、断熱に近い状態で温まる。厚さ0.5 mなら同じ時間は0.7日ほどで、発熱と並行して熱が逃げるので上昇は8.6 Kで済む。厚い部材では、中心が40 K近く上がる一方で表面は外気で冷えるので、内外の温度差による引張りで表面にひび割れが入りやすい。だから冷却管を埋めたり、発熱の小さいセメントを使ったり、打設を分けたりする。
解析のポイント
- まず L²/α で時間の尺度をつかみ、負荷の時間と比べる。
- 表面の条件はビオ数で考える。ビオ数が小さいと定常温度も時間も大きく変わる。
- 発熱が時間や温度で変わるなら、その関数を入れる(水和熱、電池の発熱など)。
- 最高温度と、内外の温度差の両方を評価する。
- 解析解のある問題でコードを確かめてから、実形状を解く。
「短時間なら定格を超えても大丈夫」
電線やモーターの巻線は、短時間なら定格以上の電流を流しても焼けないことが多い。発熱が増えても、温度が定常に近づくまでには時間がかかるからだ。電線の短時間許容電流は、まさにこの非定常の計算で決められている。逆に、冷却の弱い場所(ビオ数の小さい条件)では定常温度が高くなるうえ、そこに達するのも遅いので、試験の時間が短いと最終的な温度を見誤る。温度試験の時間は、時定数の数倍以上とるのが基本だ。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 定常だけで評価 | 短時間負荷を過大評価 | 非定常で解く |
| 試験時間が短い | 最終温度を過小評価 | 時定数の数倍 |
| 表面温度一定と仮定 | 温度を低く見積もる | ビオ数で判断 |
| 発熱を一定と仮定 | 最高温度を誤る | 時間変化を入れる |
| 内外温度差を見ない | ひび割れを見逃す | 熱応力も評価 |
関連する内容も知りたいです。
なった
詳しく
報告