プール沸騰CFD解析

カテゴリ: 連成解析・熱流体 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for pool boiling cfd theory - technical simulation diagram
プール沸騰CFD解析

理論:沸騰を決める長さと時間

概要

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沸騰をCFDで解きたいんですが、気泡を1つずつ解くべきか、モデルを使うべきか迷っています。

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まず、気泡の大きさと、気泡が並ぶ間隔を見積もるといい。これらは表面張力と浮力の比で決まる毛管長で決まり、水なら数mmだ。気泡を直接解くには、その気泡をさらに20セル程度に分ける必要がある。一方で、沸騰の模様は数cmの波長で並ぶので、計算領域はその数倍は要る。この2つの比から必要な格子の数が決まる。数え上げると、直接解くのが研究向きで、機器全体には壁面沸騰モデルが向く理由がはっきりする。

毛管長と不安定波長

$$ L_c = \sqrt{\frac{\sigma}{g\,\Delta\rho}},\qquad \lambda_d = \sqrt{3}\,\lambda_c = 2\sqrt{3}\,\pi L_c $$

$L_c$ は表面張力と重力のつり合う長さ。$\lambda_d$ は、重い液が軽い蒸気の上にのったときに最も速く成長するレイリー・テイラー波長で、膜沸騰や限界熱流束付近の蒸気柱の間隔を決める。

気泡の離脱と核生成

$$ D_d = 0.0208\,\theta\,L_c\ (\theta\ \text{in degrees}),\qquad f D_d = 0.59\left(\frac{\sigma g\,\Delta\rho}{\rho_l^2}\right)^{1/4},\qquad N_a = (210\,\Delta T_{sup})^{1.805} $$

左はFritzの離脱直径(接触角 $\theta$ は度で入れる)、中はZuberの離脱頻度、右はRPI壁面沸騰モデルでよく使われるLemmert-Chawlaの核生成点密度(壁過熱度 $\Delta T_{sup}$ の関数)。いずれも経験式で、面の状態によって大きくばらつく。

Coffee Break よもやま話

RPIモデルの誕生

壁面沸騰モデルの代表であるRPIモデルは、1990年代初めにアメリカのレンセラー工科大学(RPI)のクルールらがまとめたもので、名前は大学の頭文字からきている。壁から出る熱を、液の対流、蒸発、気泡が離れたあとに冷たい液が入ってくる『クエンチング』の3つに分けて見積もる。原子炉の燃料集合体のように、何万もの気泡を1つずつ解くことができない機器の解析のために考えられた。今では多くの商用CFDに組み込まれている。

計算例:飽和水の沸騰の尺度

大気圧と7 MPaの比較

量大気圧(100℃)7 MPa(286℃)
毛管長2.50 mm1.60 mm
臨界波長 λc15.7 mm10.0 mm
最危険波長 λd27.3 mm17.4 mm
離脱直径(接触角45°)2.34 mm1.49 mm
離脱頻度(接触角45°)39 Hz48 Hz

接触角の影響(大気圧)

接触角離脱直径離脱頻度
20°1.04 mm89 Hz
45°2.34 mm39 Hz
80°4.17 mm22 Hz

気泡を直接解く場合の格子数

離脱直径(45°)を20セルで解き、領域を最危険波長の2倍四方・高さ3倍とすると、大気圧でセル幅0.117 mm、465×465×698 ≈ 1.5億セル。7 MPaではセル幅0.075 mmとさらに細かくなるが、領域も小さくなるのでセル数は同じ1.5億になる。気泡の周期が数十ms、界面を追うための時間刻みはその千分の1程度になるので、数秒の現象を解くだけで大規模な計算になる。

壁面沸騰モデルの核生成点密度

壁過熱度核生成点密度平均間隔
5 K28 個/cm²1.9 mm
10 K99 個/cm²1.0 mm
20 K347 個/cm²0.54 mm
🙋

過熱度20 Kでは核生成点の間隔が0.54 mmで、離脱直径の2.3 mmよりずっと狭いんですね。

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そうなると、隣の気泡どうしが離れる前にくっつき、面の上に大きな蒸気の塊ができはじめる。これが限界熱流束に近づいたときの様子で、1つずつの気泡を前提にした壁面沸騰モデルの仮定が成り立たなくなっていく。RPIモデルはこの領域では精度が落ちるので、限界熱流束の予測には別の相関式やモデルを組み合わせる。逆に、過熱度5 Kでは間隔1.9 mmと気泡の大きさ程度で、気泡が独立に生まれて離れる、モデルが得意な領域だ。どちらの方法を使うにしても、まずこうした尺度を比べて、自分の計算がどの領域にあるかを確かめることが大切だ。

解析の進め方

  1. 毛管長・離脱直径・波長を先に計算し、格子と領域の大きさを決める。
  2. 気泡を直接解くならVOFかレベルセットを使い、界面での相変化モデル(Leeモデルなど)の係数に注意する。
  3. 機器全体ではオイラー二流体モデルと壁面沸騰モデルを使い、核生成密度・離脱直径・頻度の式を条件に合わせて選ぶ。
  4. 加熱面の固体の熱伝導も連成して解く。壁の温度むらが沸騰の分布を変える。
  5. 結果は沸騰曲線の相関式や実験と比べて検証する。
Coffee Break よもやま話

「面を磨いたら沸騰しにくくなった」

ある実験で、加熱面を鏡のように磨いたところ、同じ熱流束でも壁の温度が以前より高くなり、沸騰が始まるのも遅れた。磨いたことで、気泡が生まれるきっかけになる小さな傷やくぼみがなくなり、核生成点が減ったのだ。壁面沸騰モデルの核生成密度の式は、こうした面の状態を直接は含まないので、面の仕上げが違うと大きく外れる。逆に、面にわざと微細な構造をつけて核生成点を増やし、沸騰の熱伝達を高める技術も使われている。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
領域が波長より小さい気泡の並びが不自然λdの2倍以上
気泡あたりのセルが少ない界面と蒸発量の誤差20セル程度
核生成密度を確かめない熱流束が倍半分ずれる実験で合わせる
CHF付近でRPIを信じる限界を見誤るCHF相関式と併用
壁の熱伝導を無視局所の過熱を見逃す固体と連成
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