グラスホフ数・レイリー数相関

カテゴリ: 熱解析 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for grashof rayleigh theory - technical simulation diagram
グラスホフ数・レイリー数相関

理論:浮力で動く流れの強さ

概要

🙋

自然対流の相関式を見ると、グラスホフ数を使うものとレイリー数を使うものがあって混乱します。何が違うんですか?

🎓

グラスホフ数は『温度差による浮力が、粘性に比べてどれだけ強いか』、つまり流体がどれだけ動き出しやすいかを表す。レイリー数はそれにプラントル数を掛けたもので、『動いた流体がどれだけ熱を運べるか』まで含めた自然対流の強さになる。熱伝達を知りたいならレイリー数を使うのが普通だ。2つの差は、空気と油のようにプラントル数が大きく違う流体を比べるとよくわかるよ。

定義

$$ Gr = \frac{g\,\beta\,\Delta T\,L^3}{\nu^2}, \qquad Pr = \frac{\nu}{\alpha}, \qquad Ra = Gr\cdot Pr = \frac{g\,\beta\,\Delta T\,L^3}{\nu\,\alpha} $$

$\beta$ は体膨張率(理想気体では絶対温度の逆数)、$\Delta T$ は温度差、$L$ は代表長さ(垂直な板なら高さ)、$\nu$ は動粘性係数、$\alpha$ は温度拡散率。長さの3乗で効くので、大きな物体ほど自然対流が強く、乱流になりやすい。

自然対流か強制対流か

$$ Ri = \frac{Gr}{Re^2}, \qquad Re = \frac{U L}{\nu} $$

リチャードソン数は浮力と慣性力の比。目安として10より大きければ自然対流が主、0.1より小さければ強制対流が主で、その間は両方を考える複合対流になる。流れの向きが浮力と同じか逆かでも熱伝達は変わる。

Coffee Break よもやま話

名前の由来の2人

グラスホフ数は、19世紀ドイツの機械技術者グラスホフにちなむ。彼はドイツ技術者協会(VDI)の創立に関わった人物で、この数そのものを直接提案したわけではないが、後の研究者が敬意を込めて名付けた。レイリー数は、1916年に下から温めた流体層で対流が始まる条件を理論的に示した英国のレイリー卿にちなむ。レイリー卿は音響学や光の散乱(空が青い理由)でも知られ、アルゴンの発見でノーベル物理学賞を受けている。

計算例

例1:流体による違い

高さ0.1 mの垂直な板、温度差20 K。物性は代表的な近似値で、熱伝達係数はChurchill–Chuの式で求めた。

流体グラスホフ数プラントル数レイリー数熱伝達係数
空気(35 ℃)2.3×10⁶0.711.7×10⁶5 W/(m²·K)
水(35 ℃)1.2×10⁸4.85.8×10⁸785 W/(m²·K)
エンジンオイル(60 ℃)2.0×10⁴1,0502.0×10⁷73 W/(m²·K)
🙋

油はグラスホフ数が空気より2桁も小さいのに、熱伝達係数は空気の15倍もあるんですね。

🎓

そこがグラスホフ数とレイリー数の違いだね。油はとても粘いので動きにくく、グラスホフ数は小さい。でもプラントル数が1,000もあるので、温度の境界層が速度の境界層よりずっと薄く、少しの流れでも熱を効率よく運ぶ。それに油の熱伝導率は空気の5倍ある。だから熱の伝わりやすさはレイリー数で考える必要がある。水は動きやすさも熱伝導率も大きいので、空気の150倍以上の熱伝達係数になる。水冷が強力なのはこのためだ。

例2:空気を流したときの判断

流速レイノルズ数リチャードソン数判断
0.1 m/s6066.37複合対流
0.5 m/s3,0300.25複合対流
2.0 m/s12,1210.02強制対流が主

温度差20 K・高さ0.1 mの板では、0.5 m/sのそよ風程度でも自然対流の影響が残る。ファンの風が弱い場所や、ファンが止まったときの温度を見積もるには、両方を考える必要がある。

使い方の注意

  • 代表長さ:垂直な板は高さ、水平な板は面積÷周長、円柱は直径、密閉空間は壁の間隔。相関式ごとの定義に合わせる。
  • 物性の温度:壁と周囲の平均(膜温度)で評価する。油のように粘度が温度で大きく変わる流体は特に注意。
  • 乱流への移行:垂直な板ではレイリー数が約10⁹を超えると乱流になる。長さの3乗で効くので、大きな装置ではすぐに達する。
Coffee Break よもやま話

「冷却油の温度で結果が倍変わる」

変圧器の油の自然対流を計算したら、油の温度を40 ℃にするか80 ℃にするかで熱伝達係数が大きく変わった——油の粘度は温度で何倍も変わるからだ。粘度が下がるとグラスホフ数は2乗で、レイリー数も大きく増える。変圧器の油は運転中に温まるので、冷えた状態の物性で計算すると冷却を過小評価し、逆に高温の物性で起動時を評価すると過大評価する。物性の温度依存を入れて、運転の状態ごとに評価するのが確実だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
GrとRaを取り違える熱伝達を大きく誤る相関式の変数を確認
代表長さの定義が違う3乗で誤差が拡大相関式の定義に合わせる
高Prの流体をGrで判断熱伝達を過小評価Raで評価
弱い風を強制対流だけで扱う熱伝達を誤るRiで複合対流を確認
物性を一定とする(油)運転状態で大きくずれる温度依存を入れる
🙋

無次元数の計算を自分でも試したいです。

🎓

グラスホフ数の計算でグラスホフ数、自然対流シミュレーターとヌッセルト数の相関式で自然対流の熱伝達、強制対流シミュレーターで強制対流を試せるよ。形ごとの相関は垂直平板の自然対流、密閉空間の自然対流、レイリー・ベナール対流、両方が効く場合は複合対流の記事にある。

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