周波数掃引と共振評価 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

周波数掃引とは

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先生、「周波数掃引」(frequency sweep)って何ですか?


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外力の周波数を低周波から高周波まで連続的に変化させて応答を計算する手法だ。FRF(周波数応答関数)を得るための基本的なアプローチ。


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要するに「1 Hzから500 Hzまで順番に計算する」ということですか?


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そう。各周波数での応答(変位、加速度、応力)をプロットすると、共振ピークの位置と大きさが一目でわかる。


周波数刻みの設計

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周波数刻みの決め方は共振の性質に依存する:


減衰比 $\zeta$共振ピークの半値幅必要な刻み
0.1%(極低減衰)$\Delta f \approx 0.002 f_n$0.1 Hz以下
1%(鋼構造)$\Delta f \approx 0.02 f_n$1 Hz程度
5%(RC構造)$\Delta f \approx 0.1 f_n$5 Hz程度
10%(免震)$\Delta f \approx 0.2 f_n$10 Hz程度
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減衰が小さいとピークが鋭いから、細かい刻みが必要ですね。


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低減衰の鋼構造では刻みを非常に細かくする必要がある。100 Hz付近の固有振動数で $\zeta = 0.5\%$ なら、刻みは0.5 Hz以下。500点の掃引なら1〜500 Hzで1 Hz刻みだが、これではピークを見逃す可能性がある。


対数刻みとモード追従刻み

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効率的な刻み方:


1. 対数等間隔

周波数を対数スケールで等間隔に配置。低周波は粗く、高周波は細かく。音響系で一般的。

2. モード追従刻み(NastranのFREQ4)

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各固有振動数の周辺に自動的に細かい刻みを配置し、共振付近を確実に捕捉。Nastranの FREQ4 カードで設定。


3. 適応刻み

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Abaqusの BIAS パラメータで共振付近の刻みを自動的に細かくする。計算点数を指定すれば、共振付近に自動的に集中配分。


共振評価

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共振の評価指標:


指標定義用途
共振振動数FRFのピーク位置共振回避設計
ピーク振幅FRFの最大値応答の最大値評価
半値幅ピークの-3 dB幅減衰比の推定
位相変化共振で約180°変化モードの確認
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FRFのピーク振幅が設計で最も重要ですか?


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そう。ピーク振幅 × 入力力 = 最大応答。この最大応答が許容値(変位限度、加速度限度、応力限度)以内かどうかが設計判断だ。


まとめ

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周波数掃引と共振評価を整理します。


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要点:


  • 周波数を変化させてFRFを取得 — 共振ピークの特定
  • 刻みは半値幅以下 — $\Delta f < \zeta \cdot f_n$
  • モード追従刻み(FREQ4)で効率化 — 共振付近だけ細かく
  • ピーク振幅 × 入力 = 最大応答 — 設計判断の基準
  • 位相変化で共振を確認 — 180°の位相ジャンプ

Coffee Break よもやま話

NASAとNASTRAN — FEMの夜明け

今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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