RNG k-εモデル — 数値解法と実装
数値実装
RNG k-εを実装する上で標準k-εとの違いは何ですか?
ソルバーの観点では、k方程式の離散化は同一で、ε方程式のソース項に $R$ 項が追加されるだけだ。ただし、$R$ 項は $\eta = Sk/\varepsilon$ に依存し、$\varepsilon$ 自身にも依存するため、陰的な処理が必要になる。
R項の線形化
陰的処理って具体的にどうするんですか?
$R$ 項を $\varepsilon$ について線形化する。$R = \frac{C_\mu \rho \eta^3(1-\eta/\eta_0)}{(1+\beta\eta^3)} \frac{\varepsilon^2}{k}$ なので、$\eta < \eta_0$ のとき $R > 0$(ソース項)、$\eta > \eta_0$ のとき $R < 0$(シンク項)となる。
シンク項の場合は対角項に加算して暗黙的に処理し、ソース項の場合はソースベクトルに加算する。この分離により数値安定性が向上する。
壁面処理
壁面近傍はどう扱いますか?
RNG k-εモデルは本来高Re数モデルだから壁関数を使う。ただしFluentやCFXでは「Enhanced Wall Treatment」オプションがあり、低Re数領域を2層モデルで処理できる。
| 壁面処理 | 必要な$y^+$ | 精度 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 標準壁関数 | $30 < y^+ < 300$ | 中 | 産業用途一般 |
| Non-equilibrium壁関数 | $30 < y^+ < 300$ | 中-高 | 剥離・再付着流れ |
| Enhanced Wall Treatment | $y^+ \approx 1$ | 高 | 熱伝達、剥離予測 |
OpenFOAMでの設定
OpenFOAMでRNG k-εを使うにはどうしますか?
constant/turbulenceProperties で以下のように設定する。
```
RAS
{
RASModel RNGkEpsilon;
turbulence on;
printCoeffs on;
}
```
壁関数は 0/ ディレクトリの各変数ファイルで指定する。例えば nut には nutkWallFunction、epsilon には epsilonWallFunction を使う。
Fluentでの設定
Fluentでは?
Models → Viscous → k-epsilon → RNG を選択。オプションで:
- Differential Viscosity Model: 低Re数効果を含む有効粘性の式を使用
- Swirl Dominated Flow: 旋回修正を追加(旋回数が大きい場合に有効)
これらのオプションは標準k-εにはないRNG固有の機能だ。
レイノルズの実験(1883年)——乱流発見の瞬間
オズボーン・レイノルズは、管内の水にインクを流す実験で「層流から乱流への遷移」を発見しました。流速を上げていくと、インクの線がある瞬間にグチャグチャに乱れる。この劇的な瞬間を、レイノルズは数学的に $Re = \rho uD/\mu$ という無次元数で表現した。100年以上経った今も、CFDエンジニアが最初に確認するのはこのレイノルズ数です。
離散化手法の詳細解説
空間離散化における手法選択が数値精度・安定性・計算コストに与える影響を詳述する。
風上差分(Upwind)
1次風上: 数値拡散が大きいが安定。2次風上: 精度向上するが振動のリスク。高レイノルズ数流れでは必須。
中心差分(Central Differencing)
2次精度だが、Pe数 > 2で数値振動が発生。低レイノルズ数の拡散支配流れに適する。
TVDスキーム(MUSCL、QUICK等)
リミッタ関数により数値振動を抑制しつつ高精度を維持。衝撃波や急勾配の捕捉に有効。
有限体積法 vs 有限要素法
FVM: 保存則を自然に満足。CFDの主流。FEM: 複雑形状・マルチフィジックスに有利。SPH等のメッシュフリー法も発展中。
マトリクスソルバーの選定指針
問題規模と特性に応じた最適なソルバー選択のガイドライン。
| ソルバー種別 | 詳細・推奨条件 |
|---|---|
| 圧力-速度連成(SIMPLE系) | SIMPLE: 標準的だが収束が遅い。SIMPLEC: 圧力補正の緩和が改善。PISO: 非定常問題に適する。 |
| 連立系ソルバー | AMG(代数的マルチグリッド): 大規模問題の標準。ILU前処理: メモリ効率良好。ブロックGauss-Seidel: 連成系に有効。 |
| DOF別推奨 | 〜10⁵セル: SIMPLE+AMG、10⁵〜10⁷セル: SIMPLEC+AMG+並列、10⁷セル〜: 結合型ソルバー(Coupled Solver)を検討 |
時間積分法と収束判定
ソルバー内部の制御パラメータと収束判定基準について記述する。
CFL条件(クーラン数)
陽解法: CFL ≤ 1が安定条件。陰解法: CFL > 1でも安定だが、精度と反復回数に影響。LES: CFL ≈ 1を推奨。物理的意味: 1タイムステップで情報が1セル以上進まないこと。
残差モニタリング
連続の式・運動量・エネルギーの各残差が3〜4桁低下で収束と判断。質量保存の残差は特に重要。
緩和係数
圧力: 0.2〜0.3、速度: 0.5〜0.7が一般的な初期値。発散する場合は緩和係数を下げる。収束後は上げて加速。
非定常計算の内部反復
各タイムステップ内で定常解に収束するまで反復。内部反復数: 5〜20回が目安。残差がタイムステップ間で変動する場合は時間刻みを見直す。
数値解法の直感的理解
FVMのイメージ
有限体積法は「会計帳簿」に似ている。各セル(口座)について「入ってくる量」と「出ていく量」の収支を厳密に管理する。隣のセルに流れ出た量は、そのセルに流れ込む量と完全に一致する——これが「保存性」であり、流体解析で質量やエネルギーが勝手に増減しないことを保証する。
SIMPLE法のたとえ
SIMPLE法は「交互に調整する」手法。まず速度を仮に求め(予測ステップ)、その速度で質量保存が満たされるよう圧力を補正し(補正ステップ)、補正された圧力で速度を修正する——このキャッチボールを繰り返して正解に近づく。2人で棚を水平にする作業に似ている:片方が高さを合わせ、もう片方がバランスを取り、これを交互に繰り返す。
風上差分のたとえ
風上差分は「川の流れに立って上流の情報を重視する」手法。川の中にいる人が下流を見ても水の出所は分からない——上流の情報が下流を決めるという物理を反映した離散化手法。精度は1次だが、流れの方向を正しく捕捉するため安定性が高い。
CFDメッシュの品質管理や乱流モデルの選定に悩む時間を、もっと創造的な設計作業に使えたら。 — Project NovaSolverはそんな実務者の声から生まれました。
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