軸対称解析 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

軸対称問題とは

🧑‍🎓

先生、「軸対称」解析って何ですか? 2次元で3次元の問題を解けるんですか?


🎓

そう。形状、材料、荷重、境界条件が全て回転軸に対して対称な場合、3次元問題を2次元断面の解析に帰着できる。円筒座標 $(r, \theta, z)$ で $\theta$ 方向に変化がないという仮定だ。


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どんな構造が軸対称ですか?


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実はものすごく多い:


  • 圧力容器 — 円筒胴、鏡板、ノズル(周方向に一様な場合)
  • フランジ・ボルト — 締結体の軸力解析
  • ベアリング — 内輪・外輪・転動体の接触
  • ピストン・シリンダー — 内燃機関の圧力解析
  • パイプの内圧 — 厚肉円筒のラメの問題
  • 回転体 — ディスク、フライホイール、タービンロータの遠心力

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圧力容器の設計では必須ですね。


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圧力容器はASME規格でも軸対称解析が認められている。3次元で圧力容器全体をモデル化するより、軸対称の断面解析のほうが100分の1以下のDOFで同等以上の精度が出る。


支配方程式

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軸対称問題の応力成分は?


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円筒座標系で4つの応力成分が存在する:


$$ \sigma_r \text{(半径方向)}, \quad \sigma_\theta \text{(周方向 = フープ応力)}, \quad \sigma_z \text{(軸方向)}, \quad \tau_{rz} \text{(せん断)} $$

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平面応力や平面ひずみは3成分でしたが、軸対称は4成分ですか?


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そう。軸対称の特徴はフープ応力 $\sigma_\theta$ が存在すること。$r$ 方向に変位 $u_r$ があると、周方向のひずみは:


$$ \varepsilon_\theta = \frac{u_r}{r} $$

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$u_r / r$! 変位を半径で割るだけでひずみが出るんですね。これは幾何学的な効果ですか?


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完璧な理解だ。半径 $r$ の円周は $2\pi r$ だから、半径が $u_r$ だけ増えると円周は $2\pi(r + u_r)$ になる。ひずみは $\Delta L / L = u_r / r$。この$1/r$ の項が軸対称解析の核心で、平面応力/ひずみにはない特徴だ。


構成則

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軸対称のフックの法則:


$$ \begin{Bmatrix} \sigma_r \\ \sigma_\theta \\ \sigma_z \\ \tau_{rz} \end{Bmatrix} = \frac{E}{(1+\nu)(1-2\nu)} \begin{bmatrix} 1-\nu & \nu & \nu & 0 \\ \nu & 1-\nu & \nu & 0 \\ \nu & \nu & 1-\nu & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{1-2\nu}{2} \end{bmatrix} \begin{Bmatrix} \varepsilon_r \\ \varepsilon_\theta \\ \varepsilon_z \\ \gamma_{rz} \end{Bmatrix} $$

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3次元のフックの法則と同じ形ですね。4成分だけど実質3次元。


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そう。軸対称は「見た目は2次元、中身は3次元」だ。応力状態は完全に3次元で、$\sigma_\theta$ がゼロになることはない($r = 0$ を除いて)。


厚肉円筒(ラメの問題)

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内圧を受ける厚肉円筒の理論解はありますか?


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ラメの問題(Lamé problem)は軸対称の最も基本的な理論解だ。内半径 $a$, 外半径 $b$, 内圧 $p$ のとき:


$$ \sigma_r = \frac{p a^2}{b^2 - a^2} \left(1 - \frac{b^2}{r^2}\right) $$
$$ \sigma_\theta = \frac{p a^2}{b^2 - a^2} \left(1 + \frac{b^2}{r^2}\right) $$

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内面($r = a$)でフープ応力が最大で、外面に向かって減少する。内面は引張、外面に近づくにつれ引張が小さくなる。


🎓

内面の最大フープ応力:


$$ \sigma_{\theta,max} = p \frac{a^2 + b^2}{b^2 - a^2} $$

薄肉($b \approx a$)の場合は $\sigma_\theta \approx pD/(2t)$(薄肉円筒の公式)に近づく。これはFEMの軸対称解析を検証する最良のベンチマーク問題だ。


まとめ

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軸対称解析の理論を整理します。


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要点:


  • 形状・荷重・材料が回転対称なら2次元で解ける — DOFが100分の1以下に
  • 4つの応力成分 — $\sigma_r, \sigma_\theta, \sigma_z, \tau_{rz}$。フープ応力 $\sigma_\theta$ が固有
  • $\varepsilon_\theta = u_r / r$ — 幾何学的な周方向ひずみ
  • 実質3次元の応力状態 — 見た目は2次元だが中身は3次元
  • ラメの問題で検証 — 厚肉円筒の内圧は最良のベンチマーク

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圧力容器の設計では軸対称を使わない手はないですね。3次元の100分の1のコストで同等精度。


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その通り。ただし非軸対称な荷重(ノズル荷重、地震荷重)や非軸対称な形状(穴、不連続部)がある場合は3次元解析が必要だ。軸対称でスクリーニングし、必要な部分だけ3次元で詳細解析するのが効率的なアプローチだ。


Coffee Break よもやま話

タイタニック号と安全率の教訓

「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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