1次元定常熱伝導 — 数値解法

カテゴリ: 伝熱解析 | 2026-01-20
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数値解法の舞台裏

有限差分法による離散化

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1次元なら手計算で解けそうですけど、あえて数値解法を使う理由は?


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温度依存の熱伝導率 $k(T)$ や非一様発熱がある場合は解析解が得られない。FDMで等間隔格子に離散化すると


$$k_{i+1/2}\frac{T_{i+1}-T_i}{\Delta x} - k_{i-1/2}\frac{T_i-T_{i-1}}{\Delta x} + \dot{q}_{v,i}\Delta x = 0$$

ここで $k_{i+1/2}$ はセル界面の調和平均で評価する。$k_{i+1/2} = \frac{2k_i k_{i+1}}{k_i + k_{i+1}}$


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調和平均を使うのはなぜですか?


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異種材料の界面で熱流束の連続性を保つためだ。算術平均だと界面で熱流束が不連続になりうる。これはCFDソルバーでも同じ取り扱いがされている。


FEMによる1次元解析

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1次元FEMでは2節点線形要素を使う。要素熱伝導マトリクスは


$$[K^e] = \frac{kA}{L_e}\begin{bmatrix}1 & -1\\-1 & 1\end{bmatrix}$$

構造のバネ要素と全く同じ形だ。対流境界は追加項 $hA\begin{bmatrix}0&0\\0&1\end{bmatrix}$ を右端に加える。


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1次元だとExcelでも実装できそうですね。


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そうだ。教育目的には10要素程度のExcel実装が非常に有効で、FEMの本質を理解できる。実務ではもちろん汎用ソルバーを使うが、検証用の自作ツールとして手元に持っておくと役立つ。

Coffee Break よもやま話

ムーアの法則と冷却の戦い

CPUの集積度は2年で2倍になる(ムーアの法則)。しかし発熱密度もほぼ同じペースで増加。最新のCPUは数百ワットを数cm²の面積で発熱しており、単位面積あたりの発熱密度はホットプレートを超えています。電子機器の熱設計CAEは、まさに「ムーアの法則との終わりなき競争」なのです。

離散化手法の詳細解説

空間離散化における手法選択が数値精度・安定性・計算コストに与える影響を詳述する。

線形要素 vs 2次要素

熱伝導解析では線形要素でも十分な精度が得られることが多い。温度勾配が急な領域(熱衝撃等)では2次要素を推奨。

熱流束の評価

要素内の温度勾配から算出。節点応力と同様にスムージングが必要な場合がある。

対流-拡散問題

ペクレ数が高い(対流支配)場合、風上的安定化(SUPG等)が必要。純粋な熱伝導問題では不要。

マトリクスソルバーの選定指針

問題規模と特性に応じた最適なソルバー選択のガイドライン。

ソルバー種別詳細・推奨条件
直接法熱伝導の剛性マトリクスは対称正定値→Cholesky分解が最適。温度依存物性で非対称になる場合はLU分解。
反復法大規模非定常問題ではPCG+ICC前処理が効率的。放射を含む場合はGMRES推奨(非対称成分のため)。
DOF別推奨〜10⁵ DOF: 直接法(Cholesky)、10⁵〜: PCG+ICC、放射あり: GMRES+ILU

時間積分法と収束判定

ソルバー内部の制御パラメータと収束判定基準について記述する。

非定常解析の時間刻み

熱拡散の特性時間 $\tau = L^2 / \alpha$($\alpha$: 熱拡散率)に対して十分小さい刻みを設定。急激な温度変化には自動時間刻み制御が有効。

非線形収束

温度依存物性値による非線形性はマイルドな場合が多く、Picard反復(直接置換法)で十分なことが多い。放射の強非線形性ではニュートン法を推奨。

定常解析の判定

全節点の温度変化が閾値以下($|\Delta T| / T_{max} < 10^{-5}$等)で収束と判定。

数値解法の直感的理解

熱解析の離散化のイメージ

熱伝導の離散化は「バケツリレー」に似ている。連続的な温度分布を離散的な節点値で近似し、隣接する節点間で「熱のバケツ」を受け渡す。温度差が大きいほど(=バケツに入る水が多いほど)熱の移動が活発になる。メッシュが粗いと大きなバケツで大雑把に運ぶことになり、精度が落ちる。

陽解法と陰解法のたとえ

陽解法は「今の情報だけで次を予測する天気予報」——計算は速いが大きな時間刻みでは不安定(嵐を見逃す)。陰解法は「未来の状態も考慮した予測」——大きな時間刻みでも安定するが、各ステップで方程式を解く手間がかかる。急激な温度変化がない問題では陰解法で大きな時間刻みを使う方が効率的。

熱解析の境界条件設定は経験と試行錯誤の繰り返し。 — Project NovaSolverは、実務者の知見を活かしやすい解析環境の実現を研究しています。

Project NovaSolver — CAE実務の課題に向き合う研究開発

「1次元定常熱伝導をもっと効率的に解析できないか?」——私たちは実務者の声に耳を傾け、既存ワークフローの改善を目指す次世代CAEプロジェクトに取り組んでいます。具体的な機能はまだ公開前ですが、開発の進捗をお届けします。

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