爆風荷重応答解析 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
blast-response-theory
理論と物理の世界へ

爆風荷重とは

🧑‍🎓

先生、爆風荷重って何ですか?


🎓

爆発(化学爆薬、ガス爆発等)で発生する衝撃波(ブラスト波)が構造に作用する圧力荷重だ。ピーク圧力→指数減衰→負圧という特徴的な時間波形を持つ。


Friedlander波形

🎓

爆風圧力の標準的な近似式(修正Friedlander式):


$$ p(t) = p_0 + P_s \left(1 - \frac{t}{t_d}\right) e^{-b t/t_d} $$

  • $P_s$ — ピーク過圧
  • $t_d$ — 正圧持続時間
  • $b$ — 減衰パラメータ
  • $p_0$ — 大気圧

🧑‍🎓

指数的に減衰しながら負圧にも転じるんですね。


🎓

正圧フェーズ(押す力)の後に負圧フェーズ(引く力)がある。建物の壁に対して正圧(外向き)→負圧(内向き)の繰り返し。


爆風パラメータの推定

🎓

ConWep(Conventional Weapons Effects Program)のKingery-Bulmash式で爆風パラメータを推定:


$$ Z = R / W^{1/3} $$

$Z$ は換算距離(m/kg^{1/3})、$R$ は爆源からの距離、$W$ はTNT等価量。$Z$ から $P_s, t_d, I$ を推定。


🧑‍🎓

爆薬量と距離だけでパラメータが決まるんですか。


🎓

「スケーリング則」(Hopkinson-Cranz則)。同じ$Z$なら同じ圧力波形。TNT 1 kgで10 mとTNT 1000 kgで100 mは同じ$Z$で同じ過圧。


FEMでの設定

🎓

2つのアプローチ:


1. 圧力時刻歴を直接入力 — Friedlander式の圧力を構造面に時間関数として与える。最もシンプル

2. ALE法(Arbitrary Lagrangian-Eulerian) — 爆風の伝播をオイラーメッシュで、構造の変形をラグランジュメッシュで同時に解く。反射・回折を含む


🧑‍🎓

ALE法のほうが正確?


🎓

ALE法は爆風の反射、回折、重ね合わせを自動で計算するから正確。ただし空気の3Dメッシュが必要で計算コストが大きい。単純な形状なら圧力直接入力で十分。


まとめ

🎓

要点:


  • Friedlander波形 — ピーク過圧→指数減衰→負圧
  • ConWep(Kingery-Bulmash式)でパラメータ推定 — $Z = R/W^{1/3}$
  • 圧力直接入力 or ALE法 — 複雑さに応じて選択
  • LS-DYNAの*LOAD_BLAST_ENHANCED — ConWepを自動計算

Coffee Break よもやま話

NASAとNASTRAN — FEMの夜明け

今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。

CAEの未来を、実務者と共に考える

Project NovaSolverは、爆風荷重応答解析における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。

プロジェクトの最新情報を見る →