8節点六面体要素(HEX8) — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

HEX8要素の特徴

🧑‍🎓

先生、HEX8はTET10と比べてどうですか?


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HEX8(8節点六面体要素)は構造化メッシュの基本要素だ。TET10が自動メッシュの主役なら、HEX8は手動メッシュ(マップドメッシュ)の主役。


形状関数

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HEX8の形状関数は自然座標 $(\xi, \eta, \zeta)$ で表される三線形(trilinear)関数:


$$ N_i = \frac{1}{8}(1 + \xi_i \xi)(1 + \eta_i \eta)(1 + \zeta_i \zeta) $$

ここで $(\xi_i, \eta_i, \zeta_i)$ は節点 $i$ の自然座標($\pm 1$の組み合わせ)。


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三線形ということは、各方向に1次の多項式ですね。TET4と同じ1次要素?


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ここが重要な違いだ。TET4は完全1次多項式($1, x, y, z$ の4項)だが、HEX8は三線形($1, \xi, \eta, \zeta, \xi\eta, \eta\zeta, \zeta\xi, \xi\eta\zeta$ の8項)。つまり交差項を含む


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交差項があるとどう違うんですか?


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TET4は定ひずみ要素だが、HEX8は線形ひずみを部分的に表現できる。特に交差項 $\xi\eta$ のおかげで、曲げ変形を(不完全ながら)表現できる。TET4ではできなかったことだ。


HEX8の長所と短所

特性長所短所
DOF効率TET10より少ないDOFで同等精度
メッシュ生成手動(マップド)メッシュが必要
曲げ精度TET4よりはるかに良い完全積分ではシアロッキング
非圧縮材低減積分で対応可完全積分では体積ロッキング
接触面安定
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シアロッキングはQ4(2D四角形)と同じ問題ですか?


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まさに同じ。HEX8を完全積分(2×2×2 = 8点Gauss)で使うと、曲げ変形で寄生せん断ひずみが発生し、変位を過小評価する。低減積分(1×1×1 = 1点)でシアロッキングを回避するのが標準だ。


低減積分とアワーグラスモード

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1点積分だとアワーグラスモードが出ますよね。


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そう。HEX8の低減積分では12個のアワーグラスモード(ゼロエネルギーモード)が存在する。要素が砂時計状にジグザグ変形しても応力がゼロのまま。


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対策はアワーグラス制御

  • 粘性型アワーグラス制御 — 動的解析向け。人工的な粘性で抑制
  • 剛性型アワーグラス制御 — 静的解析向け。人工的な剛性で抑制
  • Enhanced Assumed Strain (EAS) — Abaqusの C3D8I。内部自由度を追加してアワーグラスを排除

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C3D8Iの「I」は「Incompatible modes」ですか?


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そう。C3D8Iは非適合モード要素で、13の内部自由度を追加する。シアロッキングとアワーグラスの両方を解決する優秀な要素だ。低減積分要素(C3D8R)よりも安定で、完全積分要素(C3D8)よりも精度が高い。


いつHEX8を使うか

🧑‍🎓

TET10があるのに、なぜHEX8を使うんですか?


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3つの理由がある:


1. DOF効率 — 同じ精度に必要なDOF数がTET10の1/2〜1/5

2. 接触安定性 — 接触面がTET10より安定

3. 大変形解析 — HEX要素は大変形で歪みにくい(TETはつぶれやすい)


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大変形でTET10がつぶれやすい?


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四面体は形状の自由度が低いため、大変形で要素が退化(ヤコビアン負)しやすい。六面体のほうが形状の余裕がある。鍛造や金属成形のような大変形問題ではHEX8が好まれる。


まとめ

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HEX8の理論を整理します。


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要点:


  • 三線形形状関数 — TET4より精度高い(交差項あり)
  • 完全積分ではシアロッキング — 低減積分(C3D8R)かEAS(C3D8I)で対策
  • 低減積分ではアワーグラスモード — アワーグラス制御が必要
  • C3D8I(非適合モード)が最もバランスがよい — ロッキングもアワーグラスもなし
  • 手動メッシュが必要 — 自動メッシュでHEX8は困難
  • 大変形・接触でTET10より有利 — DOF効率も高い

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TET10とHEX8は「自動メッシュの利便性」vs.「精度効率と安定性」のトレードオフなんですね。


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そう。プロジェクトの要件(形状の複雑さ、精度要求、計算予算)に応じて使い分ける。両方使えるエンジニアが最も強い。


Coffee Break よもやま話

タイタニック号と安全率の教訓

「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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