3節点三角形要素(TRIA3) — 理論と支配方程式
CST要素 — FEMの出発点
3節点三角形要素はCST(Constant Strain Triangle)とも呼ばれるんですよね。
そう。ひずみが要素内で一定だから「定ひずみ三角形」。1956年にTurner, Clough, Martin, Toppが発表したFEM最初の要素であり、有限要素法の歴史そのものだ。
FEM最初の要素! でもTET4のページで「1次要素は使うな」と言われましたよね。
CSTはTET4の2次元版だ。同じ欠点を持つ — ひずみが一定で応力勾配を表現できない。実務では使うべきでない。ただしFEMの原理を理解するには最適な要素だ。
形状関数
CSTの形状関数は面積座標 $L_1, L_2, L_3$ で表される:
B行列は定数で、数値積分なしに厳密に計算できる:
$A_e$ は三角形の面積、$t$ は板厚。
要素面積と板厚を掛けるだけ。計算が非常にシンプルですね。
FEMプログラミングの入門として最適だ。CSTを手計算で組み立てる演習は、剛性マトリクスの意味を深く理解するのに役立つ。
CSTの限界
CSTの限界をまとめると:
- 曲げが表現できない — ひずみ一定なので曲げの応力勾配が出ない
- 収束が遅い — 精度を出すにはQ8やTRIA6の5〜10倍の要素が必要
- 応力が要素内一定 — コンターが階段状になり、応力集中が正確に評価できない
「使うな」という結論はTET4と全く同じですね。
CST(2D)= TET4(3D)。同じ問題、同じ対策(二次要素に変更)だ。
CSTを使ってよい場面
唯一の正当な用途は教育とFEMの基礎理解だ。CSTで手計算を行い、剛性マトリクスの組み立て、境界条件の適用、連立方程式の解法を体験する。これはFEMエンジニアの必修科目だ。
まとめ
CST(TRIA3)の理論を整理します。
要点:
- FEM最初の要素(1956年) — 有限要素法の歴史的出発点
- 定ひずみ — 要素内で応力一定。応力勾配を表現できない
- 実務では使わない — TRIA6(二次三角形)かQ8を使う
- 教育用として最適 — 手計算でFEMの原理を学べる
- TET4の2次元版 — 同じ問題、同じ対策
NASAとNASTRAN — FEMの夜明け
今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
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