10節点四面体要素(TET10) — 理論と支配方程式
TET10 — 3次元自動メッシュの主役
先生、TET4は「使うな」でしたが、TET10は積極的に使っていいんですか?
TET10は3次元構造解析の実務標準だ。ほぼ任意の形状に自動メッシュが生成でき、精度も高い。現代の3次元FEMの大部分はTET10で行われていると言ってよい。
TET10の構造
TET10はTET4と何が違いますか?
TET4の4つの頂点に加えて、各辺の中点に6つの中間節点を追加した10節点の四面体。各節点に3自由度で合計30自由度。
形状関数は二次多項式:
二次の形状関数だから、変位が要素内で二次的に変化する。ひずみは線形に変化。
そう。これがTET4(ひずみ一定)との決定的な違いだ。曲げによる応力勾配を1つの要素内で表現できる。
精度の理論的背景
なぜ二次要素は精度が高いんですか?
テイラー展開で考えるとわかりやすい。真の変位場を多項式で近似するとき:
- TET4(1次要素)は定数項と1次項まで → 2次以上の項が誤差
- TET10(2次要素)は定数項、1次項、2次項まで → 3次以上の項が誤差
収束の速さ(メッシュを細かくしたときの誤差減少率):
| 量 | TET4 | TET10 |
|---|---|---|
| 変位の誤差 | $O(h^2)$ | $O(h^3)$ |
| 応力の誤差 | $O(h)$ | $O(h^2)$ |
| 収束の速さ | 遅い | 速い |
TET10は応力の誤差が $h^2$ で減少…メッシュを半分にすると誤差が1/4になる。TET4は半分で1/2にしかならない。
だからTET10は粗いメッシュでも十分な精度が出る。TET4と同じDOF数なら、TET10のほうが遥かに正確だ。
数値積分
TET10の数値積分はどうなりますか?
TET10は形状関数が二次だから、B行列は1次。$B^T D B$ は2次の多項式になり、これを正確に積分するには4点Gauss積分が必要だ。
| 積分スキーム | 積分点数 | 精度 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 4点(完全積分) | 4 | 二次多項式を厳密に積分 | 標準 |
| 1点(低減積分) | 1 | 精度低下あり | 特殊用途 |
TET10で低減積分を使うことはありますか?
ほとんどない。TET4と違って、TET10の完全積分(4点)で体積ロッキングは通常起きない。低減積分にすると精度が落ちるだけで利点が少ない。
ただしAbaqusのC3D10M(Modified)は特殊な積分手法を使う。ホバーグラス制御付きの低減積分で、接触問題での安定性が向上している。通常のC3D10とC3D10Mの使い分けは後で詳しく説明する。
曲面の近似精度
TET10は曲面も正確に表現できますか?
中間節点が辺上にあるため、辺を曲線にできる。CADの曲面に中間節点をスナップさせることで、円筒や球面のような曲面をTET4よりはるかに正確に近似できる。
例えば円孔の周囲をTET4でモデル化すると、円が多角形で近似される。TET10なら各辺が曲線になり、円に沿う。応力集中の評価精度に直結する。
中間節点をCAD面にスナップさせないとどうなりますか?
中間節点が直線的に配置された「直辺TET10」になり、曲面の近似精度がTET4並みに落ちる。多くのプリプロセッサでは自動的にCAD面にスナップするが、設定を確認すること。
まとめ
TET10の理論を整理します。
要点:
- 10節点、二次形状関数、要素内ひずみ線形変化 — TET4から質的に向上
- 収束が速い — $O(h^2)$ で応力が収束。TET4の2倍の次数
- 自動メッシュが容易 — ほぼ任意の3D形状に対応
- 曲面の表現が正確 — 中間節点のCADスナップで曲面を二次近似
- 3次元FEMの実務標準 — 「迷ったらTET10」
TET10は「自動メッシュの容易さ」と「十分な精度」を両立した、実用上最もバランスの良い要素なんですね。
その通り。完璧ではないが(HEX20のほうが効率は良い)、メッシュ生成の手間を含めた総合コストではTET10が最も優れている。
NASAとNASTRAN — FEMの夜明け
今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。
10節点四面体要素(TET10)の実務で感じる課題を教えてください
Project NovaSolverは、CAEエンジニアが日々直面する課題——セットアップの煩雑さ、計算コスト、結果の解釈——の解決を目指しています。あなたの実務経験が、より良いツール開発の原動力になります。
実務課題アンケートに回答する →