10節点四面体要素(TET10) — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

TET10 — 3次元自動メッシュの主役

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先生、TET4は「使うな」でしたが、TET10は積極的に使っていいんですか?


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TET10は3次元構造解析の実務標準だ。ほぼ任意の形状に自動メッシュが生成でき、精度も高い。現代の3次元FEMの大部分はTET10で行われていると言ってよい。


TET10の構造

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TET10はTET4と何が違いますか?


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TET4の4つの頂点に加えて、各辺の中点に6つの中間節点を追加した10節点の四面体。各節点に3自由度で合計30自由度。


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形状関数は二次多項式


$$ N_i = L_i(2L_i - 1) \quad \text{(頂点節点)} $$
$$ N_{ij} = 4L_i L_j \quad \text{(中間節点)} $$

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二次の形状関数だから、変位が要素内で二次的に変化する。ひずみは線形に変化。


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そう。これがTET4(ひずみ一定)との決定的な違いだ。曲げによる応力勾配を1つの要素内で表現できる。


精度の理論的背景

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なぜ二次要素は精度が高いんですか?


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テイラー展開で考えるとわかりやすい。真の変位場を多項式で近似するとき:


  • TET4(1次要素)は定数項と1次項まで → 2次以上の項が誤差
  • TET10(2次要素)は定数項、1次項、2次項まで → 3次以上の項が誤差

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収束の速さ(メッシュを細かくしたときの誤差減少率):


TET4TET10
変位の誤差$O(h^2)$$O(h^3)$
応力の誤差$O(h)$$O(h^2)$
収束の速さ遅い速い
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TET10は応力の誤差が $h^2$ で減少…メッシュを半分にすると誤差が1/4になる。TET4は半分で1/2にしかならない。


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だからTET10は粗いメッシュでも十分な精度が出る。TET4と同じDOF数なら、TET10のほうが遥かに正確だ。


数値積分

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TET10の数値積分はどうなりますか?


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TET10は形状関数が二次だから、B行列は1次。$B^T D B$ は2次の多項式になり、これを正確に積分するには4点Gauss積分が必要だ。


積分スキーム積分点数精度用途
4点(完全積分4二次多項式を厳密に積分標準
1点(低減積分)1精度低下あり特殊用途
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TET10で低減積分を使うことはありますか?


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ほとんどない。TET4と違って、TET10の完全積分(4点)で体積ロッキングは通常起きない。低減積分にすると精度が落ちるだけで利点が少ない。


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ただしAbaqusのC3D10M(Modified)は特殊な積分手法を使う。ホバーグラス制御付きの低減積分で、接触問題での安定性が向上している。通常のC3D10とC3D10Mの使い分けは後で詳しく説明する。


曲面の近似精度

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TET10は曲面も正確に表現できますか?


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中間節点が辺上にあるため、辺を曲線にできる。CADの曲面に中間節点をスナップさせることで、円筒や球面のような曲面をTET4よりはるかに正確に近似できる。


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例えば円孔の周囲をTET4でモデル化すると、円が多角形で近似される。TET10なら各辺が曲線になり、円に沿う。応力集中の評価精度に直結する。


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中間節点をCAD面にスナップさせないとどうなりますか?


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中間節点が直線的に配置された「直辺TET10」になり、曲面の近似精度がTET4並みに落ちる。多くのプリプロセッサでは自動的にCAD面にスナップするが、設定を確認すること。


まとめ

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TET10の理論を整理します。


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要点:


  • 10節点、二次形状関数、要素内ひずみ線形変化 — TET4から質的に向上
  • 収束が速い — $O(h^2)$ で応力が収束。TET4の2倍の次数
  • 自動メッシュが容易 — ほぼ任意の3D形状に対応
  • 曲面の表現が正確 — 中間節点のCADスナップで曲面を二次近似
  • 3次元FEMの実務標準 — 「迷ったらTET10」

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TET10は「自動メッシュの容易さ」と「十分な精度」を両立した、実用上最もバランスの良い要素なんですね。


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その通り。完璧ではないが(HEX20のほうが効率は良い)、メッシュ生成の手間を含めた総合コストではTET10が最も優れている。


Coffee Break よもやま話

NASAとNASTRAN — FEMの夜明け

今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

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