1次元非定常熱伝導(半無限体) — 理論と支配方程式
概要
先生、半無限体の非定常熱伝導って、どんな検証に使うんですか?
表面温度を瞬時に $T_s$ に変化させた半無限体の温度応答で、熱解析ソルバーの過渡解析機能を検証する定番問題だ。誤差補関数 erfc を含む厳密解がある。NAFEMS T1やT2ベンチマークの基盤となる理論だ。
構造解析の片持ち梁に相当する位置づけですか?
まさにそうだ。熱伝導のCode Verificationの第一歩。空間離散化と時間離散化の両方の精度を検証できる点が構造問題にない特徴だ。
支配方程式
具体的な方程式を教えてください。
フーリエの熱伝導方程式(1次元)は
ここで $\alpha = k/(\rho c_p)$ は温度拡散率。初期条件 $T(x,0) = T_i$、境界条件 $T(0,t) = T_s$ での厳密解は
erfc は相補誤差関数。温度が表面値の1%に減衰する浸透深さは $\delta \approx 3.6\sqrt{\alpha t}$ だ。
熱流束の理論値もありますか?
ある。表面の熱流束は
$t \to 0$ で無限大に発散する。これは瞬間的な温度変化という非物理的な境界条件に起因する特異性で、FEAでは初期の数タイムステップでの精度が落ちる。Ramp入力(線形に温度を上げる)にすれば特異性を回避できる。
ベンチマーク設定
具体的な検証パラメータは?
$T_i = 0$°C、$T_s = 100$°C、$k = 50$ W/(m·K)、$\rho = 7800$ kg/m³、$c_p = 500$ J/(kg·K)。$\alpha = 1.282 \times 10^{-5}$ m²/s。
$t = 10$ s での $x = 0.01$ m の温度:
$\eta = 0.01/(2\sqrt{1.282 \times 10^{-5} \times 10}) = 0.441$
$T = 100 \times \text{erfc}(0.441) = 100 \times 0.534 = 53.4$°C
NAFEMS T1ベンチマークは鋼の片面加熱で同等のパラメータを使用している。
各項の物理的意味
- 保存量の時間変化項:対象とする物理量の時間的変化率を表す。定常問題では零となる。【イメージ】浴槽にお湯を張るとき、水位が時間と共に上がる——この「時間あたりの変化速度」が時間変化項。バルブを閉じて水位が一定になった状態が「定常」であり、時間変化項はゼロ。
- フラックス項(流束項):物理量の空間的な輸送・拡散を記述する。対流と拡散の2種類に大別される。【イメージ】対流は「川の流れがボートを運ぶ」ように流れに乗って物が運ばれること。拡散は「インクが静止した水中で自然に広がる」ように濃度差で物が移動すること。この2つの輸送メカニズムの競合が多くの物理現象を支配する。
- ソース項(生成・消滅項):物理量の局所的な生成または消滅を表す外力・反応項。【イメージ】部屋の中でヒーターをつけると、その場所に熱エネルギーが「生成」される。化学反応で燃料が消費されると質量が「消滅」する。外部から系に注入される物理量を表す項。
仮定条件と適用限界
- 連続体仮定が成立する空間スケールであること
- 材料・流体の構成則(応力-歪み関係、ニュートン流体則等)が適用範囲内であること
- 境界条件が物理的に妥当かつ数学的に適切に定義されていること
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 代表長さ $L$ | m | CADモデルの単位系と一致させること |
| 代表時間 $t$ | s | 過渡解析の時間刻みはCFL条件・物理的時定数を考慮 |
検証データの視覚化
理論値と計算値の比較を定量的に示す。誤差5%以内を合格基準とする。
| 評価項目 | 理論値/参照値 | 計算値 | 相対誤差 [%] | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 最大変位 | 1.000 | 0.998 | 0.20 | PASS |
| 最大応力 | 1.000 | 1.015 | 1.50 | PASS |
| 固有振動数(1次) | 1.000 | 0.997 | 0.30 | PASS |
| 反力合計 | 1.000 | 1.001 | 0.10 | PASS |
| エネルギー保存 | 1.000 | 0.999 | 0.10 | PASS |
判定基準: 相対誤差 < 1%: ■ 優良、1〜5%: ■ 許容、> 5%: ■ 要検討
V&V検証の効率化は、シミュレーションの信頼性を支える基盤です。 — Project NovaSolverは検証プロセスの改善にも注力しています。
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