モード法過渡応答解析 — 理論と支配方程式
モード法過渡応答とは
先生、モード法の過渡応答解析は周波数応答のモード法と何が違いますか?
周波数応答は定常応答(ずっと同じ周波数で加振し続ける)を求める。過渡応答は時間変化する任意の外力(衝撃、地震波、ステップ入力等)に対する過渡的な応答を求める。
手法は同じ「固有モードに展開」だが、各モードの応答をDuhamelの積分(または数値時間積分)で求める:
$\omega_{di} = \omega_i \sqrt{1-\zeta_i^2}$ は減衰付き固有振動数。
各モードが独立な1自由度系として振る舞い、最後に重ね合わせるんですね。
モード直交性のおかげで $N$ 個の独立な1自由度系に分解できる。直接法($n \times n$ の連立方程式を毎ステップ解く)より遥かに効率的。
モード法の利点と制約
| 利点 | 制約 |
|---|---|
| 直接法より高速 | 線形のみ(非線形は不可) |
| 各モードの寄与を個別に評価可能 | モード数が不足すると精度低下 |
| 固有振動数解析の結果を再利用 | 外力が全DOFに作用する場合は直接法が効率的 |
「線形のみ」が最大の制約ですね。
ソルバー設定
Nastran
```
SOL 112 $ モード法過渡応答
CEND
METHOD = 10
TSTEP = 100
DLOAD = 200
BEGIN BULK
EIGRL, 10, , , 50
TSTEP, 100, 1000, 0.001
TLOAD1, 200, 300, , 0, 400
TABLED1, 400, ...
```
Abaqus
```
*STEP
*FREQUENCY
50, ,
*END STEP
*STEP
*MODAL DYNAMIC
0.001, 1.0
*CLOAD
...
*END STEP
```
AbaqusではFREQUENCYの後にMODAL DYNAMICステップを置くんですね。
固有値解析→モード法過渡応答の2段階。周波数応答のときと同じフローだ。
まとめ
タコマナローズ橋の崩壊(1940年)
完成からわずか4ヶ月で崩壊した吊り橋。風速わずか65km/hで起きた空力弾性フラッター(共振)が原因でした。この事故は「振動解析を怠るとどうなるか」の最も有名な教訓として、今でも構造力学の教科書に載っています。現代のCAEは、この種の問題を設計段階で発見できます。もし当時にCAEがあれば、橋は今も架かっていたかもしれません。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
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CAEの未来を、実務者と共に考える
Project NovaSolverは、モード法過渡応答解析における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。
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