固有振動数解析 — 理論と支配方程式

カテゴリ: 構造解析 | 2026-01-15
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理論と物理の世界へ

固有振動数とは

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先生、「固有振動数」って何ですか?


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構造物が外部からの力なしに振動するときの自然な振動数だ。全ての構造物は固有の振動数を持っており、外力の振動数がこれに一致すると共振が起きる。


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共振すると何が問題ですか?


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共振では振幅が急激に増大する。橋の崩壊(タコマナローズ橋、1940年)、建物の被害(地震時)、機械の破損(回転体の危険速度)…全て共振が原因だ。固有振動数の把握は構造設計の最も基本的な要件だ。


支配方程式

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非減衰自由振動の方程式:


$$ [M]\{\ddot{u}\} + [K]\{u\} = \{0\} $$

解を $\{u\} = \{\phi\} e^{i\omega t}$ と仮定すると、固有値問題:


$$ ([K] - \omega^2 [M])\{\phi\} = \{0\} $$

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座屈解析の $([K] + \lambda [K_\sigma])\{\phi\} = \{0\}$ と同じ形!


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まさに同じ数学構造だ。座屈では $[K_\sigma]$ の位置に $[M]$ が入る。だから同じ固有値ソルバー(Lanczos法等)が使える


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$\omega_i$ が角振動数(rad/s)、$f_i = \omega_i / (2\pi)$ が固有振動数(Hz)、$\{\phi_i\}$ がモード形状。


単自由度系の固有振動数

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FEMの前に、最も基本的なケース:


$$ f = \frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{k}{m}} $$

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ばね定数 $k$ と質量 $m$ だけで決まる。剛性が高いほど、質量が小さいほど振動数が高い。


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この単純な関係はFEMの結果をサニティチェックするのに非常に有用だ。構造の等価剛性と等価質量を概算して $f$ の桁を見積もっておく。


梁の固有振動数

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基本的な梁の1次固有振動数:


条件$f_1$備考
片持ち梁$\frac{3.516}{2\pi L^2}\sqrt{\frac{EI}{\rho A}}$最も低い
単純梁$\frac{\pi^2}{2\pi L^2}\sqrt{\frac{EI}{\rho A}}$
両端固定梁$\frac{22.37}{2\pi L^2}\sqrt{\frac{EI}{\rho A}}$最も高い
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境界条件で固有振動数がかなり変わりますね。


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片持ちと両端固定で6倍以上の差がある。FEMの結果が理論値と大きくずれたら、境界条件の設定を最初に疑うべきだ。


FEMでの固有振動数解析

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FEMで固有振動数を求める手順は?


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1. モデル化メッシュ、材料($E, \rho$)、境界条件

2. 固有値解析の実行 — Lanczos法で下位 $n$ モードを求める

3. 結果の確認 — 固有振動数とモード形状

4. 検証 — 理論解または実験モード解析と比較


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材料定数で $\rho$(密度)が必要なのは静解析と違いますね。


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そう。静解析では $E$ だけで済むが、固有振動数には $\rho$ が必須。密度の設定を忘れると固有振動数がゼロまたは無限大になる。これは非常に多いミスだ。


まとめ

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固有振動数解析の理論を整理します。


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要点:


  • $([K] - \omega^2 [M])\{\phi\} = \{0\}$ — 座屈と同じ固有値問題
  • $f = (1/2\pi)\sqrt{k/m}$ — 全ての基礎。サニティチェックに使う
  • 境界条件が固有振動数を大きく変える — 片持ち vs. 両端固定で6倍
  • 密度 $\rho$ の設定が必須 — 忘れると結果が無意味
  • 共振の回避が設計目標 — 外力の振動数と固有振動数を離す

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固有振動数解析は「構造が何Hzで揺れるか」を知るための最も基本的な動的解析ですね。


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その通り。全ての動的解析(応答解析、時刻歴解析)の基盤が固有振動数解析だ。これなしに動的設計は成り立たない。


Coffee Break よもやま話

タイタニック号と安全率の教訓

「不沈」と謳われたタイタニック号は、低温でのリベット材の脆性破壊が沈没の一因とされています。現代の破壊力学CAEでは、温度依存の材料特性と応力拡大係数を計算して「その温度で本当に大丈夫か?」を事前に検証できます。技術の進歩は、過去の悲劇から学んだ結果です。

各項の物理的意味
  • 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
  • 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
  • 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
  • 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
  • 連続体仮定:材料を連続的な媒質として扱い、ミクロな不均質性を無視する
  • 微小変形仮定(線形解析の場合):変形が初期寸法に比べて十分小さく、応力-歪み関係が線形
  • 等方性材料(特に指定がない場合):材料特性が方向に依存しない(異方性材料では別途テンソル定義が必要)
  • 準静的仮定(静解析の場合):慣性力・減衰力を無視し、外力と内力の釣り合いのみを考慮
  • 適用外ケース:大変形・大回転問題では幾何学的非線形性が必要。塑性・クリープ等の非線形材料挙動では構成則の拡張が必要
次元解析と単位系
変数SI単位注意点・換算メモ
変位 $u$m(メートル)mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること
応力 $\sigma$Pa(パスカル)= N/m²MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意
歪み $\varepsilon$無次元(m/m)工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時)
弾性率 $E$Pa鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意
密度 $\rho$kg/m³mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼)
力 $F$N(ニュートン)mm系ではN、m系ではNで統一

数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)

最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)

メッシュ密度を変えた収束性の確認:

粗いメッシュ(500要素)0.362 mm
-5.0%
中程度(2,000要素)0.378 mm
-0.8%
細かいメッシュ(8,000要素)0.380 mm
-0.3%
理論解0.381 mm
基準

ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。

簡易計算ツール:構造力学基礎

片持ち梁の先端集中荷重における最大たわみ・最大応力を計算します。

単軸応力状態における応力・歪み・伸びの相互換算。

CAE実務でよく使う単位の換算。

構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。

CAEの未来を、実務者と共に考える

Project NovaSolverは、固有振動数解析における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。

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