3次元定常熱伝導 — 理論と支配方程式
3次元定常熱伝導の基礎
3次元の熱伝導解析って、2次元から何が変わるんですか?
温度場が3方向に変化するので、形状の簡略化が効かない問題が対象だ。エンジンブロック、金型、電子筐体など、現実の多くの問題は本質的に3次元だ。
支配方程式
3次元定常熱伝導方程式は
展開すると
異方性材料では $k_x \neq k_y \neq k_z$ となる。
3次元になると解析解はほぼ無いですよね?
直方体で各面に単純境界条件を与えた場合は3重級数解が存在するが、実用上は数値解法が必須だ。FEMのソリッド要素(四面体、六面体)を用いた離散化が標準手法だ。
境界条件の種類
3次元問題では面ごとに異なる境界条件を設定する。
| 面 | 条件 | 例 |
|---|---|---|
| 発熱面 | 熱流束 q [W/m2] | IC発熱面 |
| 放熱面 | 対流 h, T∞ | ヒートシンク外面 |
| 接触面 | 接触コンダクタンス | ボルト締結部 |
| 対称面 | 断熱 (q=0) | 対称利用 |
| 固定温度 | T = const | 冷却水面 |
面ごとに条件を変えられるのが3Dの強みですね。
そうだ。1Dでは全体を一括で扱うしかないが、3Dでは各面、各領域に個別条件を設定でき、現実の物理に忠実なモデルが作れる。
ムーアの法則と冷却の戦い
CPUの集積度は2年で2倍になる(ムーアの法則)。しかし発熱密度もほぼ同じペースで増加。最新のCPUは数百ワットを数cm²の面積で発熱しており、単位面積あたりの発熱密度はホットプレートを超えています。電子機器の熱設計CAEは、まさに「ムーアの法則との終わりなき競争」なのです。
各項の物理的意味
- 蓄熱項 $\rho c_p \partial T/\partial t$:単位体積あたりの熱エネルギー蓄積率。【日常の例】鉄のフライパンは熱しにくく冷めにくいが、アルミ鍋は熱しやすく冷めやすい——これは密度 $\rho$ と比熱 $c_p$ の積(熱容量)の違い。熱容量が大きい物体は温度変化が緩やかになる。水は比熱が非常に大きい(4,186 J/(kg·K))ため、海沿いの気温は内陸より安定する。非定常解析ではこの項が温度の時間変化速度を決める。
- 熱伝導項 $\nabla \cdot (k \nabla T)$:フーリエの法則に基づく熱伝導。温度勾配に比例した熱流束。【日常の例】金属スプーンを熱い鍋に入れると持ち手まで熱くなる——金属は熱伝導率 $k$ が高いため、高温側から低温側へ素早く熱が伝わる。木製スプーンが熱くならないのは $k$ が小さいから。断熱材(グラスウール等)は $k$ が極めて小さく、温度勾配があっても熱が伝わりにくい。「温度差のあるところに熱が流れる」という自然の傾向を数式化したもの。
- 対流項 $\rho c_p \mathbf{u} \cdot \nabla T$:流体の運動に伴う熱輸送。【日常の例】扇風機に当たると涼しく感じるのは、風(流体の流れ)が体表面近くの暖かい空気を運び去り、新鮮な冷たい空気を供給するから——これが強制対流。暖房で部屋の天井付近が暖かくなるのは、暖められた空気が浮力で上昇する自然対流。PCのCPUクーラーのファンも強制対流で放熱している。対流は熱伝導よりも桁違いに効率的な熱輸送手段。
- 熱源項 $Q$:内部発熱(ジュール熱、化学反応熱、放射線吸収等)。単位: W/m³。【日常の例】電子レンジは食品内部のマイクロ波吸収(体積発熱)で加熱する。電気毛布のヒーター線はジュール発熱($Q = I^2 R / V$)で暖かくなる。リチウムイオン電池の充放電時の発熱、ブレーキパッドの摩擦熱も熱源として解析で考慮される。外部から「表面」に熱を与える境界条件とは異なり、熱源項は「内部」でのエネルギー生成を表す。
仮定条件と適用限界
数値例:平板の定常熱伝導(厚み10mm, 鋼k=50W/(m·K), 表面100°C/裏面20°C)
熱流束 q = k×ΔT/L = 50×80/0.01 = 400,000 W/m² 各位置の温度は線形分布
材料別の熱伝導率の比較(数値が大きいほど熱を伝えやすい):
銅は空気の約15,000倍も熱を伝えやすい! ヒートシンクに銅やアルミが使われる理由がこのグラフで一目瞭然です。
熱解析の境界条件設定は経験と試行錯誤の繰り返し。 — Project NovaSolverは、実務者の知見を活かしやすい解析環境の実現を研究しています。
CAEの未来を、実務者と共に考える
Project NovaSolverは、3次元定常熱伝導における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。
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