4節点四辺形要素(QUAD4) — 理論と支配方程式
Q4要素 — 2次元FEMの主力
先生、4節点四辺形要素(Q4)って2次元FEMの基本ですよね。
形状関数
Q4の形状関数は自然座標 $(\xi, \eta)$ で双線形(bilinear):
4つの節点は $(\xi, \eta) = (\pm 1, \pm 1)$ に対応。
双線形ということは、$1, \xi, \eta, \xi\eta$ の4項。交差項 $\xi\eta$ がある。
この交差項のおかげで、Q4は3節点三角形(CST)より曲げの表現能力が高い。ただし完全な曲げ変形を表現するには $\xi^2, \eta^2$ 項が必要で、Q4にはこれがない。
シアロッキングの問題
Q4のシアロッキングについて教えてください。
完全積分(2×2 Gauss点)のQ4で純粋曲げを表現しようとすると、寄生的なせん断ひずみが発生して要素が「固まる」。これがシアロッキング。
物理的にはこうなる:
- 純粋曲げでは上面が伸び、下面が縮む
- Q4の双線形形状関数ではこの変形を表現するとき、不可避的にせん断ひずみが出る
- このせん断ひずみのエネルギーが余分に蓄えられ、要素が硬くなりすぎる
対策は?
3つの方法:
1. 低減積分(1×1 Gauss点) — せん断を積分点1つで評価。ロッキングは消えるがアワーグラスモードが発生
2. 非適合モード(Incompatible modes) — $\xi^2, \eta^2$ に対応する内部自由度を追加。NastranのCQUAD4、AbaqusのCPS4I
3. Assumed Natural Strain (ANS) — せん断ひずみを別途仮定
NastranのCQUAD4はデフォルトで非適合モードが入っているんですよね。
そう。NastranのCQUAD4はFEMの歴史で最も成功した要素の一つと言われている。MacNealとHarderが1985年に発表した改良版で、非適合モードにより曲げ精度を大幅に改善しつつ、パッチテストも満たす。
Q4の長所と短所
| 特性 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| メッシュ生成 | マップドメッシュが容易 | 自由メッシュでは三角形も混ざる |
| 精度 | 非適合モードで高精度 | 歪んだ形状で精度低下 |
| 計算コスト | 低い(8 DOF) | — |
| 曲面近似 | — | 直辺のみ(曲面は折れ線近似) |
まとめ
Q4の理論を整理します。
HEX8のページで学んだロッキングやアワーグラスの概念が、Q4でもそのまま当てはまるんですね。
Q4はHEX8の2次元版だから、全く同じ問題が起きる。2次元で理解しておけば、3次元に拡張するのは容易だ。
NASAとNASTRAN — FEMの夜明け
今や世界中で使われている有限要素法ソルバー「NASTRAN」は、1960年代にNASAが開発しました。アポロ計画でロケットの構造解析が必要だったのです。当時のコンピュータはメモリ数KBの時代——今のスマートフォンの100万分の1以下の性能で、人類を月に送る構造計算をしていたのです。
各項の物理的意味
- 慣性項(質量項):$\rho \ddot{u}$、つまり「質量×加速度」。急ブレーキで体が前に投げ出された経験はありませんか? あの「持っていかれる感じ」がまさに慣性力です。重い物体ほど動き出しにくく、動き出したら止まりにくい。地震で建物が揺れるのも、地面が急に動いたのに建物の質量が「置いていかれる」から。静解析ではこの項をゼロにしますが、それは「ゆっくり力をかけるから加速度は無視できる」という仮定です。衝撃荷重や振動問題では絶対に省略できません。
- 剛性項(弾性復元力):$Ku$ や $\nabla \cdot \sigma$。ばねを引っ張ると「戻ろうとする力」を感じますよね? あれがフックの法則 $F=kx$ であり、剛性項の本質です。では質問——鉄の棒とゴム紐、同じ力で引っ張るとどちらが伸びるでしょうか? 当然ゴムです。この「伸びにくさ」がヤング率 $E$ であり、剛性を決めます。よくある勘違い:「剛性が高い=強い」ではありません。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」で、別の概念です。
- 外力項(荷重項):体積力 $f_b$(重力など)と表面力 $f_s$(圧力、接触力など)。こう考えてみてください——橋の上のトラックの重さは「中身全体にかかる力」(体積力)、タイヤが路面を押す力は「表面だけにかかる力」(表面力)。風圧、水圧、ボルトの締付力…すべて外力です。ここでありがちな失敗:荷重の方向を間違える。「引張」のつもりが「圧縮」になっていた——笑い話に聞こえますが、3D空間で座標系が回転していると実際に起こります。
- 減衰項:レイリー減衰 $C\dot{u} = (\alpha M + \beta K)\dot{u}$。ギターの弦を弾いてみてください。音は鳴り続けますか? いいえ、徐々に小さくなりますよね。振動エネルギーが空気抵抗や弦の内部摩擦で熱に変わるからです。車のショックアブソーバーも同じ原理——わざと振動エネルギーを吸収して乗り心地を良くしています。もし減衰がゼロだったら? 建物は地震の後いつまでも揺れ続けることになります。実際にはそうならないので、適切な減衰の設定が重要です。
仮定条件と適用限界
次元解析と単位系
| 変数 | SI単位 | 注意点・換算メモ |
|---|---|---|
| 変位 $u$ | m(メートル) | mm入力時は荷重・弾性率もMPa/N系に統一すること |
| 応力 $\sigma$ | Pa(パスカル)= N/m² | MPa = 10⁶ Pa。降伏応力との比較時に単位系の不一致に注意 |
| 歪み $\varepsilon$ | 無次元(m/m) | 工学歪みと対数歪みの区別に注意(大変形時) |
| 弾性率 $E$ | Pa | 鋼: 約210 GPa、アルミ: 約70 GPa。温度依存性に注意 |
| 密度 $\rho$ | kg/m³ | mm系ではtonne/mm³(= 10⁻⁹ tonne/mm³ for 鋼) |
| 力 $F$ | N(ニュートン) | mm系ではN、m系ではNで統一 |
数値例:片持ち梁の先端荷重(L=1m, 断面50×100mm, 鋼材E=210GPa, P=1kN)
最大たわみ δ = PL³/(3EI) = 1000×1000³/(3×210000×4,166,667) ≈ 0.381 mm 最大応力 σ = PL×(h/2)/I ≈ 12.0 MPa(降伏応力235MPaに対して安全率19.6)
メッシュ密度を変えた収束性の確認:
ポイント:要素数を4倍にしても結果は0.5%しか変わらない→8,000要素で十分収束。これが「メッシュ収束性」の確認です。
構造解析の収束問題や計算コストに課題を感じていませんか? — Project NovaSolverは、実務者が日々直面するこうした課題の解決を目指す研究開発プロジェクトです。
CAEの未来を、実務者と共に考える
Project NovaSolverは、4節点四辺形要素(QUAD4)における実務課題の本質に向き合い、エンジニアリングの現場を支える道具づくりを目指す研究開発プロジェクトです。
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